日本の新聞社は、自分たちでいろんな事業を展開している。芸能、スポーツなどのイベント開催、プロモート、ゴルフ練習場、不動産展示場、旅行。



これらの事業を自社媒体を使って告知することで、大きな収益を上げている。広告宣伝費は一般企業では大変なコストだが、新聞系事業ではそれを内部留保できるのだ。これは大きなアドバンテージだ。
そういう部署には左遷された元記者が、浮かぬ顔で座っていることも多い。

他の先進諸国では、こういう例はあまり見られない。第4の権力と言われるメディアの公平性、中立性を考えれば、こうした事業展開には問題があるからだ。

そもそも新聞社が、放送局を持つことも異例だ。これをメディア・クロスオーナーシップというが、アメリカではメディア間での批評がなくなること、また、テレビ、新聞、一方の媒体が圧力を受けた時に、他方も影響を受けることを懸念してこれを禁じている。
しかし日本では、最も影響力のある地上波キー局と在阪局はすべて新聞社の系列だ。だから、朝日新聞社主催の高校野球を朝日放送が大々的に報道するのだ。

数ある事業の中でもスポーツ事業は、各新聞社ともにドル箱だ。朝日は高校野球、全日本大学駅伝対校選手権、レガッタ、毎日は社会人野球、高校野球、マラソン、讀賣はプロ野球、関東大学駅伝、インターハイなど枚挙にいとまがない。
スポーツ団体側にしてみれば、新聞社が後ろ盾に就けば社会的信用があるし、大々的に報道してくれるし、スポンサーも付くし言うことなしではある。
しかし、その競技、団体に改善すべき問題が生じたときに、新聞社は自社事業のため、正面から批判できなくなる。腰の引けた報道しかできない。

中でも高校野球は、実質的に朝日新聞が考案し、組織を設立して、阪神電車に鳴尾球場の改修、甲子園球場の建設までを要請して、育ててきた。
第一回中等野球選手権大会の始球式をしたのは朝日新聞社社長の村山龍平だった。
以後、高野連と朝日新聞は密接な関係を保ってきた。高野連の初代会長は朝日新聞社社長の上野精一、第6代会長の奥島孝康は就任前に朝日新聞監査役。他の会長は、直接には関連はないものの、事務局レベルでは、朝日新聞の意向が強く働いているものと思われる。

高校野球が権威化し、あたかも法王庁のようにふるまい始めたのは、第3代会長、佐伯達夫の時代だとされる。極端なプロ野球嫌いの佐伯はアマチュアリズムを強制し、「高校生らしさ」を維持するために、服装から応援にまで細かく注文を付ける今の高野連の体制を作った。
朝日新聞がこれに積極的に関与したかどうかはわからないが、佐伯の”暴走”を止めることができなかった。

以後、高野連は「甲子園」を「伝統文化」のように守り、継承することを絶対的な使命とするようになる。昨年の女子マネの話でもわかるように、「自分たちで判断すること」「変えること」を極端に恐れる超保守的な体制になっているのだ。

高校野球の現場では、日程、服装や応援団など、多くの問題点が指摘されているが、ほとんどが「高野連が動かないから」いかんともしがたいことになっている。

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朝日新聞とて、現状の高校野球を是としているわけではないはずだ。
しかし、高校野球を批判することが、自己批判になるという自家撞着の前に立ちすくんでいるというのが現状だろう。
スケールの違う話だが「従軍慰安婦問題」に近い重たい問題なのだと思う。

プロ野球球界再編事件で巨人の批判には健筆をふるった朝日新聞編集委員が高校野球の奨学金問題では口を固くつぐんだ一件は多くの人が知るところだ。

「野球離れ」に甲子園、高校野球が深くかかわっていることは事実だ。野球の衰退とともに、それは明るみに出るだろう。
高野連、そして朝日新聞などメディアの「不作為」は、いずれ非難の対象になろう。

いずれかの段階で、メディアは「手のひら返し」をせざるを得なくなる。私は野球界のために新聞社が「口を拭って」高野連、高校野球の問題点を直言しても別に構わないと思う。
その内容が真摯なものであれば、私は支持したいと思う。



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