NPBで実績を上げることなく引退し、解説者やタレントになる人は何人かいる。
その走りは佐々木信也だろう。慶應義塾大学のスター選手だったが高橋ユニオンズに入団。球団の吸収、合併の悲運によってわずか4年で引退。解説者になった。
これまでの解説者は、自分の現役時代の経験に基づいて話すのが普通。試合前に選手に話を聞いたり、スコアを調べたりすることもなかった。
しかし佐々木は、試合前に選手や指導者に話を聞くとともに、データをチェック。さらに天候なども確認して解説をした。それだけでなく、活舌をよくするために専門家について練習したり、野球以外の教養も身に着けた。
多くの人は、プロ野球ニュースの名キャスターぶりは覚えているだろうが、佐々木信也はその前にV9時代の巨人戦の、最も優秀な解説者だった。口跡が良い上に、機転が利き、すばらしい警句を発した。
「クリープを入れないコーヒーなんて、ホームランが出ないプロ野球のようですね」というCMをよく覚えている。

青島健太も慶應義塾出身。ヤクルトに入団するも3年で引退。ジャーナリストに転向し、スポーツライター、キャスターとして活躍している。私はJ Sportsで青島とテレビに出演していたことがあるが、完全なプロだった。頭の回転が速く、一瞬で話題を変えたりする。これも運動神経のなせる業かと思った。文章も達者。何度か握手をしたが、手の大きさが印象的だった。

同じ系統で栗山英樹もいた。栗山は7年で引退し、野球解説者となる。しゃべりでは佐々木や青島には及ばなかったが、取材力があり、ジャーナリストとして優秀だった。彼がたゆまぬ努力をしていたことは、日本ハム監督として成功したことでもわかる。

有名選手だったプロ野球解説者は「顔」で飯が食える。最初から注目度が高いから、大したことは言わなくてもなん徳納得してくれる。百年一日のごときことしか言わなくても、通用したのだ。

しかし地上波TVでのプロ野球中継がほぼ姿を消し、マルチチャンネルの時代になって解説者のギャラは大きく下落した。その上に野球をよく知るファンをターゲットにするために、単なる自慢話や上から目線のワンパターンではなく、より実のある、面白い話をしなければならなくなった。解説者にとっても「冬の時代」が来たのだ。

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中にはプロ時代の実績は大したことがなくても、「言動が面白い」ことで注目される野球人がいる。
板東英二、加藤博一、川藤幸三、パンチ佐藤などがそれだ。
板東は本当にしゃべくりの名人だった。プロ野球解説としては「おもろすぎて邪魔になる」タイプだった。

板東「何を隠しましょう、プロ入団当時、私は大スターでありました。同期の王貞治も、張本勲も足元にも及ばなかった。それが今や天と地ほどの差です」
アナ「・・・・・」
板東「そんなことないって言わんか!」


板東はバラエティのMCや、俳優としても活躍した。

しかし加藤博一やパンチ佐藤は、「野球をやめてしまえば、それほど面白くはない」という評価に落ち着いた。加藤は早逝したが、パンチ佐藤もテレビで見ることは少ない。

川藤は今もテレビに出ているが、今の野球のことがわかっているとは思えない。

報知
阪神・川藤幸三OB会長(67)が14日、甲子園室内練習場で行われた新人合同自主トレを視察し、まさかの「酒1升飲まんかい指令」を出した。
「お前ら、酒は飲めるんか?」。キョトンとする3人に「1升飲めるんか?」とたたみかけた。その圧力に、ドラフト7位の長坂拳弥捕手(22)=東北福祉大=が思わず「1升飲めます」と返事。すると「大山、お前はどや?」。「少しです」とドラ1。「プロに入ったら、酒ぐらい飲めるようになれ!」

裏返せば、川藤は1升酒を飲んでいたから、あの程度で終わったともいえよう。

江本孟紀はこの話を聞いてこういった。
スポニチ
「もうちょっとまともなことを言えって、新人に」
「OB会長、まだやってるの?おととしのOB会で『そろそろ辞めんかい』って言ったのに…」


江本の発言も問題なしとしないが、川藤幸三は昭和の野球を引きずったまま、テレビで生きていくことになろうのだろう。
「昭和の時代」の、とっくに通用しない古臭い「野球観」が関西のしょうむないおっさん、おばはんに通用しているうちは、テレビの向こうで怒ってみせたりして、お金を稼いでいくのだろう。



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