日刊スポーツ
米大リーグ機構が今季からの導入を求め、敬遠とストライクゾーンに関するルール変更を選手会に正式に提案したとスポーツ専門局ESPN(電子版)が6日に報じた。
敬遠については、試合時間の短縮などを目的に、投手はボールを4球投げなくても意志を示すだけで打者を一塁に歩かせることができるルールで、実現する可能性があるとESPNは伝えている。
この話を聞けば、日本の野球ファンなら新庄剛志の顔を思い浮かべるのではないか。

1999年6月12日の甲子園での巨人戦、12回裏、一死一三塁で、新庄は槙原寛己が投じる敬遠球を振りぬき、左前にサヨナラ安打した。

この逸話は新庄を語る際に欠かせない。

これ以前にも1990年の東京ドームの巨人広島戦で9回裏一死一二塁、投手金石昭人で、広島はクロマティを敬遠して原辰徳と勝負しようとしたが、クロマティはその初球を右中間に運んで、走者桑田真澄がホームイン、サヨナラ安打になっている。

敬遠は、ボールデッドではなく、インプレーだ。投じる球にバットが届くなら打ってもよい。

ごくまれには敬遠暴投と言うプレーもある。

99.999%四球になるだろうが、ごくわずかな可能性も残っている。それも野球の味だと思うのだ。

敬遠は、正式には故意四球。英語ではintentional base on balls 略称IBBだ。「敬遠」は野球語翻訳の傑作とされる。
強打者との対戦を避けて、投手がわざと四球にする行為。もとはただの四球と区別されていなかったが、MLBでは1955年から別個に記録されるようになった。NPBもそれに追随した。
当初は4球ともストライクゾーンを大きく外れた球を投げないとIBBは記録されなかったが、のちに4球目だけでもIBBとなる。

IBBが多いのは強打者とDH制のないリーグの捕手だ。

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このルールは、「考える時間」がたっぷりとある野球と言うゲームの特質をよく表している。
一瞬の判断ではなく、選手、ベンチが熟考して「勝負」をするかどうか、決める手続きでもある。
4つのボールを投げるのは意味がないと思えるかもしれないが、これもドラマだ。
4球が投じられる間、敬遠される打者は打つ意思を相手に示す。悔しがる打者もいる。投手の中には忸怩たる思いを抱いている場合もあるし「これも勝負の内」と割り切っている場合もある。

敬遠を簡略化するのは、野球独特の微妙なプレーの味を損なわせる。
おそらく、投球数の削減を考える意向もあるのだろう。敬遠と言っても4球も投げるのだから。

「時間短縮」は野球界の大きなトレンドだが、なんでもかんでもそうなるのは危険だと思う。

その考えを敷衍すれば、例えば、本塁打もフェンスオーバーすれば、あとは何事も起こらないのだから、走者はダイアモンドを回らなくてもいい、とも考えられる。
併殺も、ゴロが野手の前に飛んだ時点で審判が「ゲッツー」を宣言することだって考えられる。

時間短縮、合理化が野球の「味わい」を損なうことを危惧する。たとえMLBで承認されても、NPBは簡単に追随しないでほしい。


1971~73年新浦寿夫、全登板成績【この1勝までが本当に長かった。苦労したかいがあった】


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