「敬遠申告制」は、将来展望が厳しくなりつつあるMLBの焦燥が背景にある。日本にも「野球危機」は存在しているが、全く状況は違う。
アメリカ、MLBは、スポーツビジネスの分野ではトップランナーだ。
選手のFA権の問題、エクスパンションなど、さまざまな問題はあったが、ピーター・ユベロス以来、敏腕コミッショナーがトップビジネスマンとして強いリーダーシップを発揮し、MLBの価値を最大化した。30球団のオーナーが機構に従順に従っているのは、MLBのビジネスがうまく回っていたからだ。
バド・セリグも、今のマンフレッドも、MLB全体の経済的拡大を最大の使命として活動している。

そのMLBが、危機感を持っているのだ。他のアメリカンスポーツとの競合の激化、メディアの流動化、そしてアメリカ人の価値観、嗜好の変化に、野球はついていけなくなっている。経済価値を拡大するのが難しくなっている。
「敬遠」を端緒として始まるかもしれない、野球ルールの「改変」は、野球を現代アメリカ人の嗜好に合わせて変容させ、商品価値を維持、向上させたいという意向からきているのだ。
単純な「時短」ではなく、ペース、テンポを変えて、せわしないアメリカのファンにニーズに応えようとしている。
まさにビジネスマンの感覚で、野球を変えようとしているのだ。

アメリカの野球は外的要因によって変革を迫られている。

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日本の状況は全く異なる。日本の野球は世の中の変化に全く無関心で、昭和の価値観のままここまで来ている。コンプライアンス意識の欠如、モラルハザード、経済観念の欠如によって、自壊する危機を迎えている。
もちろん、その間にサッカーの急成長があった。サッカーと比較して、あまりにも意識が低く、低次元であることが露呈して、野球離れが進んでいるのだ。

外的要因もあるが、日本の野球界は、はるか昔の成功体験から抜け出せず、ガラパゴス化して危機を迎えているのだ。

MLBが「敬遠」を改変するのは、その後の、極端なルール変更の端緒である可能性がある。
NPBは、1年遅れでMLBのルール改変を受け入れてきたが、ここで踏みとどまるべきだろう。この改変が、日本のファンにとってどんな意味を持つのか。今後の日本野球の方向性に、どんな影響をもたらすのか。

日本でも「時短」が課題になっている。3時間も4時間もだらだら試合をするのは確かに問題だ。しかし、それはイニング間の時短や、無用の選手交代の自粛などで工夫の余地がある。ルールに手を突っ込んで時間短縮をする必要は全くない。

NPBはアマチュア野球界とも、こうしたアメリカ野球のトレンドについて協議すべきだ。そのうえで、日米での整合性には留意しつつも「うちはこういう方針で行く」というはっきりした方向性を打ち出すべきだ。

日本で進行する「野球離れ」に、アメリカの「野球改変」がからまって事態は複雑化する可能性がある。
しかし、日本は野球百年の計に立ってよく考えるべきである。
これまで野球関係者は野球界ではなく、自分にとって「得」か?「損」か?しか考えてこなかった。それでは通用しない時代が迫ってきつつある。



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