私は彼のことをひそかに「つっころばし」と呼んでいた。
上方歌舞伎の言葉で、背中を突かれれば転んでしまいそうな、頼りない、ひ弱な二枚目のこと。

偉大な選手の後釜を約束され、他の選手より優遇されているにもかかわらず、結果が出ていない。男前で、人気はあったが、力はとてもとてもと言う感じだ。

S-Kobayashi


キャリア3年、打撃成績が年々下がっている。
阿部慎之助が、捕手が難しくなり、家督相続したはいいが、守りに精いっぱいで、打席ではバットをもって立っているだけ、と言う感じ。打撃成績はもちろん最下位。
親の大名跡を継いで困っている梨園の御曹司のごとし。

守備ではリーグ屈指、盗塁阻止率.356は1位だ。しかし「専守防衛」でいいとは誰も思っていない。もう少し気概を出してほしい。

侍ジャパンにも小林は呼ばれていた。
しかしWBC本番前まで13試合で15打数0安打1犠飛。他にめぼしい捕手がいないわけでなし、「つっころばし」にいつまでも侍のユニフォームを着せなくても、と思っていた。

しかし彼は大舞台で成長したのだ。壮行試合からの戦績。

Kobayashi


本番までの壮行試合では、先発マスクをかぶるかどうかも不確かだった。

ポイントはキューバとの開幕戦、8番松田が安打で出て、小林は送るケースだったが、バントを失敗。ここで開き直って中前に侍初安打。
得点には結びつかなかったが、4回の次の打席では初球をバント。これで完全に吹っ切れた。8回には犠飛で初打点

以後、小林のリードも積極的になったように思う。内角に速球をずばっと投げ込ませる勇気。
眼の色も違ったように思える。

中国戦で初本塁打。オランダとの死闘でも2安打、そしてキューバとの再戦でも2安打。昨日は8回に代打を送られたが、小久保監督が躊躇するほどの存在感だった。

小林は世界戦の大舞台で確実に成長したのだ。「つっころばし」から、花も実もある二枚目役者に。

私は生まれてこの方巨人を応援したことは1秒たりともないが、今シーズンは小林誠司に注目したいと思う。



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