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グラブ職人、酒井真矢さんに聞くグラブの話。前回の話にも出た通り、グラブの原材料は牛の皮革だが、どんな皮を使っているのか?

「基本的には、輸入牛の皮です。牛を屠畜したあとに皮をはいで塩漬けにします。防腐と染色をしやすくするためです。その形で国内に入ってきて、姫路の業者が買い取り、水で戻してから毛抜きの作業をします。薬品も使いますが、手作業もします。
こうした大処理が終わった皮を『青床(あおどこ)』といいます。
この青床を染めていきます。
昔は皮の色は、オレンジか黒と決まっていました。高野連がグラブの色を厳しく規制していたため、野球界全体がグローブと言えばオレンジか黒と言う感じでした。
しかし最近は、赤、青、ネイビー、黄色、白のグラブもできてきました。その色の皮も作られています。
ただし皮は1色です。2トーンなどの染色はできません。

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黄色に染められた牛革

青床の段階で、皮の選別をします。A、B、Cの三段階に分けます。これは表面の色による選別です。
Aの皮がオレンジや黄色など色の浅い色に染められます。
表面が傷んでいる皮は、黒や茶色など傷みが目立たない濃い色に染められます」

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■和牛のグラブが人気に

ところで、皮製品と言えば、靴やカバン、ベルトなどもあるが、そうした皮とグラブの皮は、どういう関係にあるのだろう?

「グラブの皮は、靴やカバンの皮に比べれば価格は安いです。高級皮革ではないですね。でもそれは用途が違うからです。靴やカバンの皮でグラブを作っても良いものはできないと思います。
でも最近は和牛の皮を使ったグラブが人気になっています。
昔は和牛の皮と言えば、ミットと相場が決まっていたのですが、グラブも作るようになりました。
和牛の皮は厚みは薄いのですが、きめが細かくて腰があって、しっかりしています。また軽くて使い心地がいいので、高級なグラブの素材になっています。
海外では、牛はほとんど放牧して育てます。草原や山地で好きなように餌を食べますから、生傷を負うことも多いんです。輸入牛の皮はどうしても表面に傷がつきます。大きな傷がある部分は使えません。
でも和牛は牛舎でつながれて肥育されますから、ほとんど傷がない。
ただし和牛の皮は薄い上に、表面が固いので、ひっくり返すと裂けてくることもあります。
技術的には難しいところもあるのですが、和牛の皮でのグラブづくりは研究が進んでいます。
いろいろなメーカーから高級品として発売されています。

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■ホルスタインはグラブには使わない

グラブに使うの牛は、ステアが主力です。ステアは生後3~6ヶ月に去勢され、2年以上経った牡の成牛の革です。流通量が多く、入手しやすいです。
子牛(キップ)の皮はきめが細かくて、グラブには良いのですが、グラブ以外でも需要が高いので、価格が高騰しています。
キップより少し年齢が上のオーバーキップは、去年はオーダーの商品に使っていましたが、皮が薄い上に歩留まりが悪いのがマイナスですね。

グラブに使う牛は、黒牛がメインです。赤牛も使いますが、皮が厚いのでホルスタインは使いません」

皮一つとっても話は尽きない。

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いろいろな色の皮革の裁断くず


開幕戦本塁打王は誰だ!(後編)

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