今年、2016年のナ・リーグCo本塁打王だったクリス・カーターがNPBに来るのではないかと言う話があった。タイトルを取ったにもかかわらず、年が明けても去就が定まらなかったのだ。


ブリュワーズでのカーターは41本塁打こそ打ったものの206三振、打率は下から二番目の67位、OPSは.821、DHで2試合しか守らずWARはわずか0.9だった。

結局、ヤンキースに1年350万ドルで契約したが、打撃三冠のタイトルの相対的な価値の下落を象徴するような出来事だった。

過去5年のア・ナ両リーグでの打撃三冠のタイトルホルダー、WAR1位、MVP受賞者。

WAR-MLB


2012年のアはミゲル・カブレラが三冠王。これはカール・ヤストレムスキー以来45年ぶりの歴史的な偉業であり、WAR1位のトラウトを差し置いてMVPとなった。しかし、文句なしの選出ではなく議論の余地があったと記憶している。
ナは首位打者を取り、WARも1位のポージーがMVP。

2013年、アは連続首位打者のカブレラがWAR1位のトラウトを差し置いて連続MVP。
ナはタイトルホルダーでもなく、WARも2位だったマカッチェンがMVP。

2014年、ア・ナともにWAR1位の選手がMVP、ナは投手のカーシヨウがWAR1位となり受賞。これはレアなケース。

2015年、打点王のドナルドソンがWAR1位のトラウトを差し置いてMVP。ナは本塁打王でWAR1位のハーパーが受賞。

2016年は、WAR1位のトラウトとクリス・ブライアントが受賞。

過去5年、本塁打王、打点王でMVPになったのは三冠王のミゲル・カブレラとハーパーだけ。この2つのタイトルは、選手の評価とはあまり関係がなくなっている。それに比べれば打率はましではある。

アで5年連続WAR1位のトラウトが連続受賞しなかったのは「いくらなんでも」という意識が記者に働いたのだと思うが、WARが打撃3タイトルよりも重要視されているのは明らかだ。

中にはタイトルを取ったのに評価が上がらなかった選手もいる。
2016年のカーターのほか、2013年のナの首位打者カダイヤ、2014年のナの首位打者モルノーなどだ。2人はともに3年以内にMLBをFAになっている。日本では考えられない。

MLBでは選手の評価はもはや本塁打や打点、打率ではなくWARをはじめとする攻守の総合的な指標になっている。実はそうした「価値観の差」が、日米の最大の差かもしれない。

日本のスポーツ紙は相変わらず「メジャー何本の強打者」みたいな表現をするが、それはMLBでの実力を何も語っていないのと同然だ。
日本の記者は昨年のセのMVPに新井貴浩を選んだが、これもMLB的にはあり得ない判断だろう。

アメリカが何でも良いわけではない。問題も多いが、野球選手の実力をより正確に、深く知ろうとする探求心では、日本の野球ジャーナリズムは、アメリカの足元にも及ばない。


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