アメリカでは、野球の普及にファンタジー・ベースボールが一役買っている。MLBの公式サイトでもデータを発表しているが、MLBファンのかなりの部分がファンタジー・ベースボールのプレイヤーだと思われる。
ファンタジー・ベースボールのプレイヤーは、各自が球団のオーナー、あるいはGMとなって選手を獲得し、チームを作っていく。
実際のシーズンに平行して2~3月に愛好者が集まってリーグを作り、実在の選手をピックアップするドラフトを実施し、メンバーを決めていく。

選手の評価はリアルなSTATSをもとにするもの。セイバー系、特にWARに基づくものなどがある。
ネット上で対戦をして優劣を決めることもあれば、数字を比べるなど、いろいろな方法がある。

MLB公式だけでなく、ESPNや、Yahoo、CBS、FOXなどがファンタジー・ベースボールのサイトを設け、それぞれ異なるルールでファンを集め、リーグを運営している。

ポイントは選手の実力や故障などが、リアルな選手の実際と連動すること。だから、自分のチームに所属している選手がリアルでDL入りすると、ファンタジー・ベースボールのプレイヤーはがっくりしたりするのだ。
シーズン中のトレードやウェーバーなども行われる。
そして秋に、リーグの優勝劣敗を決めるのだ。

MLBとファンタジー・ベースボールは連動しているので、プレイヤーはMLBでのチームや選手の動向に注目するようになる。
MLBのファンを増やすうえでは誠によくできたゲームだ。他の野球ゲームのように「リアルな野球とは別物」にならないのが良い。

アメリカの遊びによくあるように、一部の愛好者が始めたものだが、今では全米で400万人が遊んでいるという。さらにバスケットボールやフットボールなど他のスポーツもファンタジー化している。

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日本では何度もファンタジー・ベースボールの普及が図られたが、定着しなかった。
NPBでは選手の異動が少ない。ファンタジー・ベースボールの魅力の大きな部分はトレード、ディールなのだが、NPBではそれが極めて不活発だ。
MLBではシーズン中でも選手をさかんに放出したり、トレードしたりするが、NPBではそれも少ないために対応できない。
また日本の野球は「一戦必勝」の試合が尊ばれる。選手の奮闘、汗と涙みたいなものが支持されるが、ファンタジー・ベースボールにはそうした要素がない。
これも、ファンタジー・ベースボールが定着しない原因の一つだろう。

ファンタジー・ベースボールは「投資」「投機」のゲームだ。「マネーゲーム」と呼ばれる金融市場ともイメージが重なる。このゲームの普及とともにアメリカのファンはかなり変質していったのではないか。
リアルなMLBで、マネーゲームのような大型契約が増えているのと軌を一にしてファンも野球をスポーツではないゲームとして見始めているのかもしれない。

こういう問題を引き続き見ていきたいと思う。



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