この本の作者、ジェフ・パッサンは日本も取材している。2014年に来日している。
その当時、当サイトでも取り上げたが、ジェフ・パッサンは安樂智大の甲子園での酷使と、それを擁護する愛媛済美の上甲監督に話を聞いている。
さらに、この年、肩、肘のリスクを回避するために、自ら投球制限をすると明言して投げていた、大和広陵の立田翔太や父、若い監督なども取材している。
そしてダルビッシュの育ての親の少年野球の指導者にも話を聞いている。

私は立田が岡本和真がいる智辯学園に敗れた試合を見ているが、パッサンも同じ試合を見ていたのだ。

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アメリカだけでなく、日本でも青少年の酷使は大きな問題になっていたのだ。

プロ選手、とりわけ投手の年俸が高騰するなかで、「100マイル出せる投手」の価値はうなぎのぼりである。子どもや親、指導者、エージェントなどが、そういう人材に寄せる期待はますます高まっている。

そのために、多くのひずみが生じている。そうした事情は日米で相似している。

この本では日本の事情はあくまでサイドストーリーだから、それ以上は突っ込んでいないが、事実関係が次々と明らかになる中で、アメリカでは様々な意見が飛び交っている。
子どもを出しにビジネスをする大人が続々と生まれている一方で、少年野球の環境を変えようという動き。健康面でのケアを考える動きも出てきている。

しかし日本では、事実を前にしても、物事はほとんど動いていない。故上甲監督が「甲子園とは、高校野球とはこんなものだ」と頑なに述べたことから、半歩も進んでいない。
日本の野球界、とりわけ高野連を核とするアマチュア球界のどうしようもない愚鈍さが、アメリカとの対比で際立っている。

途中まで読んでいて、必ず出てくるだろうなと思ったが、著者は野球医学の第一人者、馬見塚尚孝氏も取材している。
馬見塚先生のもとには、肘や肩を痛めた子供がたくさん治療に訪れる。その現状をパッサンは目の当たりにしていたのだ。

馬見塚先生は昨年、東大で行われたシンポジウムで、野球少年の健康を守ることを訴えたが、その前提として「野球全体の理念を作らなければならない」と強調した。

まさに小手先の手当ではどうしようもない、日本野球の制度疲労、硬直化がトミー・ジョン手術というファクトを通じて浮かび上がってきている。

私は今週にも「東洋経済」で「野球崩壊」の続編の連載を始めるが、それを書く上でも、重要な示唆を与えてくれた。
問題意識のある人は必読です。


先発投手の白星がついたのは何試合目?

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