昨日の甲子園での試合、6回裏1死に鳥谷が登場した時に、場内に沸いた歓声、拍手について考えてみよう。



前日の試合、鳥谷敬は吉川光夫の144km/hの速球を顔面に受けて倒れ、退場した。上唇と鼻から出血し、試合に出られる状態ではなかった。

やはり鳥谷は鼻を骨折していた。出場が危ぶまれた。鳥谷は阪神打線の中心選手であり、しかも前日まで1794試合連続出場をしていた。
NPB2位に相当するこの大記録が、不慮の事故によって途切れるのは誠に残念だ。

観客の多くがそういう懸念を抱く中、鳥谷はフェースガードをして球場に現れた。スタメンは外れたが、6回に打席に立った。
観客席はまず「安堵」の感情を抱いた。長期離脱などの重症ではなさそうだ。そして連続出場記録が途切れることもなかった。これも良かった。
しかし打席の鳥谷は、とても万全とは言えなかった。
申し訳程度にバットを振って、早々に凡退したが、観客席は鳥谷が「割と元気そうだったこと」「大記録が途切れなかったこと」に安堵したのだ。ベストの状態でなかったのは残念だが、「ま、いいか」と寛容な気持ちでこの日の鳥谷を受け入れたのだ。

しかしこの状態が、何試合も続いたらどうなるか。
試合の重要でない局面で、フェースガードの鳥谷が登場して、試合の流れとは関係のないパフォーマンスをして引き下がる。
2試合目、3試合目と拍手は小さくなるだろうし、違和感を覚える人は増え続けるだろう。
「鳥谷は、自分の記録のためだけに試合に出させてもらっている」
「金本は、自分もずるをして試合に出してもらっていたから、鳥谷の要望を断ることができない」
そういう事情があらわになってくるだろう。
ましてや、鳥谷のプレーが黒星に絡んだりすれば、称賛の声は非難に変わるはずだ。
「いつまで甘えてるねん」

金本監督も、鳥谷敬自身もそのことは重々承知しているはずだ。鳥谷は一日も早くフェースガードを外す必要があるし、スタメンで出る必要もある。
回復して、「記録を続けさせるため」でなく、「チームを勝利に導くため」に出場していることをアピールする必要がある。

IMG_3217


フェアプレーの精神にもとづけば、「試合に出られる状態」でなかった選手が、「チームの勝利と無関係な事情で」試合に出場し、「ベストとは言えないパフォーマンス」のまま引き下がることは許されない話のはずだ。

しかし「お話し好き」で、「阪神贔屓」で、規範意識がやや緩い「野球ファン」という「いいお客さん」によって、鳥谷敬は一時的に「悲劇のヒーロー」になった。

鼻骨の骨折は、実はスポーツ選手には良く起こるアクシデントだ。力士などはしょっちゅうだし、野球選手でも珍しくはない。回復途上でも試合出場は不可能ではない。
金本はこの日、金本監督に先発出場を直訴したという。その程度のアクシデントだったのだ。
もちろん、死球の恐怖は脳裏に残るかもしれないが、鳥谷は数試合以内に復帰するのではないか。
ただし、この一事によって、鳥谷の連続試合出場記録は、他のこの記録と同様「ねつ造された部分あり」になる。

鳥谷だけでなく、多くの先人の詐術もあって、連続試合出場記録は、「よた記録」に堕ちている。表彰しないほうがいいと思う。

P5202306


1977年安田猛、全登板成績【チーム初の2位に自己最多の17勝】

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!