鳥谷はフェースガードもとれたが、まだスタメンは無理なようで、8回に投手伊藤和の代打に立って、一ゴロだった。ま、こういう形で連続試合出場をつなぎながらリハビリをする気なのだろう。何事もなかったかのように。
ところで、今回の死球禍で気になるのは、ぶつけた巨人の吉川光夫の「ショック」「気持ち」をうんぬんする人が多かったことだ。

吉川の気持ちを考えて、鳥谷は無事であることを示すために翌日打席に立った、

みたいなコメントがあったが、これ、全く的外れだ。

吉川は通常のプレーとして、鳥谷敬に死球を与えた。ぶつけた個所は良くなかったが、ルールに反したわけでも、罪を犯したわけでもない。
彼は、プロ入りしてから36個の死球を与えている。2015年はパの最多与死球だった。中には上半身などにぶつけた死球もあったが、それで彼がショックを受けたとは思えない。
鳥谷敬もここまで44個の死球を受けており、けがは大きかったが「通常のプレーの一環」だということができる。

野球には死球はつきものであり、投手が死球のたびにトラウマを持っていては野球など続けられない。

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広島の外木場義郎は、1970年8月、鳥谷の大先輩である阪神、田淵幸一にこめかみに死球を与えた。田淵は昏倒し、直後は意識がなかった。41試合も欠場するほどの大けがだったが、外木場は以後も10年間、エースとして君臨した。
外木場について語るときに、田淵に与えた死球がどうの、ということはほとんど話題にならない。

日本ではぶつけた投手が打者に帽子をとって謝ることになっている。これはチームが違っても先輩後輩などの人間関係が濃密な日本の野球界独特の習慣、マナーであり、謝罪という深い意味はない。
MLBではこういうことはしない。もし帽子をとって謝れば、その投手は「わざとぶつけました、ごめんなさい」と言っていることになり、かえって打者に殴りかかられたりすることがある。
わざとでないことを証明するために、投手は知らん顔をするのだ。

確かに死球をめぐってトラブルになることは多い。両軍入り乱れての乱闘騒ぎになったり、死球の応酬があったりする。
これはもともと対立関係にある両チームが、死球というアクシデントをきっかけに感情が高ぶってエキサイトすることによっておこる。
選手は仲間、チームへの忠誠心を示すために、乱闘に参加し、死球の応酬をするのだ。ある意味「約束事」であり、芝居のようなものだ。投手と野手の心理的な問題とは別だ。

今では吉川のように打者の顔面にぶつけたり、頭部にビーンボールを投げたりした投手は「危険球退場」となる。
これは、「わざと頭部を狙う」ような危険な投球をさせないため、そして乱闘や死球の応酬など、無用のトラブルを避けるためだ。

吉川が鳥谷に与えた死球がもとで、投球がおかしくなったり、投げられなくなるとすれば、それは吉川がそれだけの投手だということだ。おそらく、鳥谷も吉川には何の遺恨もないはずだ。



1977年安田猛、全登板成績【チーム初の2位に自己最多の17勝】

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