今日は、スポーツマネジメントを学ぶ若い人に話をさせていただく機会があった。
文章の書き方とか、企画書とかそういうのがメインだが、そういう話をする際には、今の野球やスポーツ界の状況について必ず説明をする。
スポーツも一つのビジネス分野だから、ビジネス的にどういう状況なのかを知っておくことは非常に重要なのだ。
「野球離れ」の話もする。私にとっては主たる問題意識になっているから力説する。
今や、NPBの関係者と話していても、独立リーグやアマ球界の人と話していても、この話は本当に深刻だ。現場で「野球離れ」を実感していない人は、もういないと思う。
地方の野球関係者の中には「もう怖い領域」「絶望的」という人さえいる。
しかしながら、一般の人には全然ぴんと来ていない。今日話した若い人たちは、知らないではなかったようだが、かといって大問題だという認識もなかったように思う。
野球界の多くの人は、東京五輪が終わるころから「野球危機」が顕在化するのではないかと言っている。
どういう形をとるのかわからないが、最もはっきりした兆候は、NPBや甲子園の観客動員に翳りが見えてくることだろう。
恐らく、五輪あたりをピークとして、観客動員は減ってくるだろう。この時期には、今は顕在化していない「高校野球の競技人口」も間違いなく減少に転じる。
そしてじわじわと野球界はシュリンクしていく。私が恐れているのは、野球のダウンサイジングがうまくいかないケースだ。
企業でもそうだが、売り上げがピークを過ぎてからちょっと下落したくらいで、企業自体の体力や能力、資産があっても突然倒産することがある。それは主として信用不安によるものだ。
「野球がダメになる」という評判が立つと、野球と無関係のスポンサーが契約を打ち切ったり、契約金を激減させたりする可能性がある。スポンサーになるような企業は「勝ち組」にしかお金を出さない。少しでも「負け組」の匂いがすると一挙に背中を向ける。八百長事件のころの大相撲にもそういう現象が起こった。
あまり知られていないが、今のNPBは観客収入と同じくらいスポンサーフィーが大きい。これがなくなると、球団は立ちいかなくなる。そして「人気があるから」と球場にやってきていたファン、野球ではなく「球団」や「応援そのもの」が好きだったファンの足が遠のく可能性がある。
そうなると経済規模を縮小しつつ最適化を目指すような「ソフトランディング」は不可能になる。かつてのプロレスのように、一気にマイナースポーツ化する「ハードランディング」が起きてしまう可能性がある。
「野球は今まで人気を独占しすぎたのだから、少しくらい衰えても、それがちょうどいいんじゃないか」という意見があるが、お気楽な意見だ。「少しぐらい衰えた状態」は、自然に作ることはできない。
ビジネスの分野では、マーケットのシェアは劇的に変化する。よほど人為的にうまくコントロールしないと、最適化などできないのだ。ビジネスの世界ではチャンスをつかんで伸びていくよりも、撤退するときの方がはるかに難しい。「撤退戦略」は、至難の業なのだ。
そんなことは知ったことではないかもしれないが、野球界はかじ取りをする人がいないと、非常に難しい状況になっていくだろう。
野球の最適化に向けて、今から準備すべきだと思うが、いろいろな人に話を聞いても、その担い手は見えてこない。野球界には本当の意味でのリーダーが不在なのだ。
そして新聞メディアが「野球危機」を全く報じないから、スポーツマネジメントを志すような若い人も危機感を持っていない。
野球界に籍のない私ひとりが切歯扼腕しても仕方がないのだが、大変な時代になったと思う
衣笠祥雄、全本塁打一覧(前編・1965~1974)|本塁打大全
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「野球離れ」の話もする。私にとっては主たる問題意識になっているから力説する。
今や、NPBの関係者と話していても、独立リーグやアマ球界の人と話していても、この話は本当に深刻だ。現場で「野球離れ」を実感していない人は、もういないと思う。
地方の野球関係者の中には「もう怖い領域」「絶望的」という人さえいる。
しかしながら、一般の人には全然ぴんと来ていない。今日話した若い人たちは、知らないではなかったようだが、かといって大問題だという認識もなかったように思う。
野球界の多くの人は、東京五輪が終わるころから「野球危機」が顕在化するのではないかと言っている。
どういう形をとるのかわからないが、最もはっきりした兆候は、NPBや甲子園の観客動員に翳りが見えてくることだろう。
恐らく、五輪あたりをピークとして、観客動員は減ってくるだろう。この時期には、今は顕在化していない「高校野球の競技人口」も間違いなく減少に転じる。
そしてじわじわと野球界はシュリンクしていく。私が恐れているのは、野球のダウンサイジングがうまくいかないケースだ。
企業でもそうだが、売り上げがピークを過ぎてからちょっと下落したくらいで、企業自体の体力や能力、資産があっても突然倒産することがある。それは主として信用不安によるものだ。
「野球がダメになる」という評判が立つと、野球と無関係のスポンサーが契約を打ち切ったり、契約金を激減させたりする可能性がある。スポンサーになるような企業は「勝ち組」にしかお金を出さない。少しでも「負け組」の匂いがすると一挙に背中を向ける。八百長事件のころの大相撲にもそういう現象が起こった。
あまり知られていないが、今のNPBは観客収入と同じくらいスポンサーフィーが大きい。これがなくなると、球団は立ちいかなくなる。そして「人気があるから」と球場にやってきていたファン、野球ではなく「球団」や「応援そのもの」が好きだったファンの足が遠のく可能性がある。
そうなると経済規模を縮小しつつ最適化を目指すような「ソフトランディング」は不可能になる。かつてのプロレスのように、一気にマイナースポーツ化する「ハードランディング」が起きてしまう可能性がある。
「野球は今まで人気を独占しすぎたのだから、少しくらい衰えても、それがちょうどいいんじゃないか」という意見があるが、お気楽な意見だ。「少しぐらい衰えた状態」は、自然に作ることはできない。
ビジネスの分野では、マーケットのシェアは劇的に変化する。よほど人為的にうまくコントロールしないと、最適化などできないのだ。ビジネスの世界ではチャンスをつかんで伸びていくよりも、撤退するときの方がはるかに難しい。「撤退戦略」は、至難の業なのだ。
そんなことは知ったことではないかもしれないが、野球界はかじ取りをする人がいないと、非常に難しい状況になっていくだろう。
野球の最適化に向けて、今から準備すべきだと思うが、いろいろな人に話を聞いても、その担い手は見えてこない。野球界には本当の意味でのリーダーが不在なのだ。
そして新聞メディアが「野球危機」を全く報じないから、スポーツマネジメントを志すような若い人も危機感を持っていない。
野球界に籍のない私ひとりが切歯扼腕しても仕方がないのだが、大変な時代になったと思う
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スポーツにも色々な競技があると思いますが、これらの若い人たちはどの競技界で働くことをを志向しているのでしょうか。
その選択肢の中に野球が含まれないのだとすれば、それはそれで寂しいことだと思いますが。