Jリーグに激震が走っている。DAZNとの契約で主導的な役割を果たした中西大介常務理事が、セクハラ問題で辞任したのだ。
中西大介は、衛星で受験向けのコンテンツを配信する「東進ハイスクール」を成功させ、その実績を引っ提げてJリーグに入社。
主として中継、コンテンツの制作、販売、放映権ビジネス関連の事業を手掛けてきた。
プロスポーツにとって、放映権ビジネスは決定的に重要だ。
スタジアムのキャパシティには限界があるが、スポーツ番組の中継、配信には限界がない。世界的なスポーツ事業は、F1でもワールドカップでも、オリンピックでも、同時に何億もの人間が視聴している。
中西はJリーグ理事に就任。伸び悩んでいた放映権事業を立て直し、2016年にはDAZNとの10年2100億円という巨額契約を実現する立役者になった。
川淵ファウンダーの評価も高く、2015年にはBリーグの理事にも就任している。
52歳という年齢からしても、間違いなく時代のサッカー界、スポーツ界をけん引する経営者の一人だった。

しかし6月27日、部下の女性に対する長期にわたるセクシャルハラスメント行為や、職員に対するパワーハラスメント行為が明らかとなり、本人からの申し出によりJリーグ常務理事を辞任。すべての役職から身を引いた。

Jリーグはこういう人間を中枢に据えていた。改革は口先だけだったのか。「"プレイヤーズファースト"が聞いてあきれる」と敢えて言っておきたい。そういわれても申し開きはできないはずだ。

この男は昔からそういう性癖を持っていたはずだ。しかし仕事ができたので、ここまで目こぼしをうけてきた。
「このやり方で通用する」と思うに至ったのだ。こういう化け物を育てたのはJリーグだったと言えよう。

私の昔の同僚に、通勤電車で女性の体を触るのが趣味の男がいた。30年以上前の話だ。「今日は何人さわった」と自慢げに話していた。会社でも女性社員の尻を触っていた。
当時でも、他には誰もそんなことはしていなかったので、「なぜするのか」と聞くと、真顔で「相手も喜んでいる」と言った。お世辞にも男前とは言えない男だったが、彼は「コミュニケーションのうち」だと本気で思っていたのだろう。
営業マンとしては優秀で、いろいろな契約もとってきたし、クライアントの評価も高かった。
そういう人間がいるのだと思った。

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野球界では、ダイエー・ホークスの高塚猛の事件が記憶に新しい。リクルートを経て1999年にホークスに入り、「福岡3点事業」(福岡ダイエーホークス、福岡ドーム、ホークスタウン)の経営責任者として辣腕を振るった。
スポーツビジネスの専門家は、高塚がダイエーで始めた球団ビジネスの改革こそが、今のパ・リーグ、NPBのビジネスモデルの原型になったとしている。
地域に密着し、ファンをスタジアムに動員するための様々なイベントを企画する。「スポーツ観戦」ではなく「球場で一日楽しく過ごす」ことをコンセプトに、球団ビジネスを劇的に変えた。
高塚が推進した経営改革がなければ、今のパ・リーグ、NPBははるかに衰退していただろう。2004年オフの球界再編が、一部経営者の思惑と違う決着になったのも、すでに新たなビジネスモデルを構築しつつあったダイエー・ホークスなどの実績があればこそだ。
しかし高塚は球界再編後のホークスにはいなかった。前年、小久保裕紀の巨人放出をめぐってのトラブル、そして高塚自身の公私混同、決め手になったのは10月の強制わいせつ事件だった。

実は私の元同僚もリクルートの出身だった。この会社は広告界に新風を吹き込んだが、営業マンが体育会系で、いろんな意味で「やり手」だった。
よく一緒に仕事をしたがクライアントの受付で「あの子もあの子も、あの子も、全部いってます」みたいな営業マンが多くて、うんざりした記憶がある。

リクルートの社員が全員そうではないだろうが「売ったもん勝ち」のベンチャー企業には、そういう「乗り」があるのだろう。
営業でのストレスを、下劣なこと、くだらないことで発散する。品のないことではあるが、そういう卑劣な人間は存在するのだ。

近年、セクハラ、パワハラは、その人物を失脚させるような衝撃度のある問題行為になっている。ピンク色の女性国会議員もそうだが、世間は、相手の人格を毀損するような人間に対して非常に厳しい。
私は、このことは本当に良いことだと思っている。人を蔑み、傷つけることで鬱憤を晴らすような卑劣な人間、異性を欲望の対象としか見なさない人間は、この世に存在する価値はないと思っている。
そういう形で失脚した人間には、再チャレンジをさせる必要もないと思う。

しかし、スポーツ界は永年規範意識がいびつで、モラルが低かったこともあって、往々にしてそういう人間が中枢部にいる。セクハラ、パワハラで、突如そういう人間が失脚するのは大きな損失だ。

JリーグもNPBもこの手の下劣な人間を早期に発見して、再教育すべきだ。どうしても治らないなら、有能であっても、イジェクトすべきだろう。

どんなにやり手でも、どんなに優秀でも、その人間に「正義」がなければ、存在価値はないのだ。

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