昨日のオールスター戦は「さくさく進んだ」という印象だった。テレ朝の中継は、一番野球を知っている清水俊輔が担当。選手やら監督やらいっぱい放送ブースに呼ぶのはいらざることではあったが、まずは及第点ではないか。
この放送から、テレ朝は「トラックマン」などを導入した。
トラックマンは、トラッキングシステムの一種。投球の初速、回転数、そこから割り出されるSPV、さらに打球の所属、確度、推定飛距離なども掲示する。

MLBでは一般的になったし、NPBでも多くの球団が利用しているが、そもそもこのシステムは「業務用」であり、一般のファンに提示するには、いろいろな加工も説明も必要だろう。

オールスターでのトラックマンの表示は、少しずつテンポがずれていたので、どの投球、打球の数値なのかよくわからない時があった。

それ以上に問題だったのは、アナウンサーや解説者(稲葉篤紀、前田智徳、古田敦也)が、これは何を意味しているのかを理解していないことだった。

MLBでのトラックマンの平均値を出していたが、NPBと比較する場合、どこがポイントなのか説明できていなかった。

球の切れを示すSPVは2016年は上原浩治が1位だったようだが、この日登板した谷元圭介や又吉克樹なども結構いい数値が出ていた。また宮西のスライダーは3000回転を超えていた。
これだけを見ると、MLBの上原よりも谷元や又吉のほうが凄いかのような印象を与えてしまう。

上原は昨年、768球を投げている。計測不能だった球を除いた平均値が1位だったということで、最大瞬間風速的には、この数値を上回ることなどざらにあるわけだ。だから上原の数字とオンタイムの計測値を並べるような見せ方はまずいのだ。

そういうことが頭に入っていないから、目の前の投手がたたき出した数字の適切な評価ができない。
打者についてもそうだろう。

P3026060


最近は、NPBでもUZRやWARなどの数値が発表されるようになった。私は自分で計算できない数値は極力使わないようにしている。また文系おっさんとして、数式や計測のメカニズムはほとんど理解できない。

しかしながら、そうした最先端の数値を用いた解説には、あまり脅威を感じない。
一般のファンに対して興味を引くような面白い解説ができる人が今のところいないからだ。

トラックマンなどの解析システムは、本来、球団や選手向けのものだ。
スタッフはそれらのデータが何を表しているのかを理解し、説明しているのだと思うが、一般のファンには全く別の視点からの解説が求められる。

基本は「その数字は誰のどんな数字と比べて凄いのか」「昔の誰と比べてどうなのか」「その数字から、この選手のどんな特性が見えるのか」ということだ。

データは適切に「比較」しないと意味がない。そして野球ファンに提示するには「歴史的に見てどうなのか」を常に意識しなければならない。
そしてその選手の「特徴」をくっきりと描き出すものでなければ意味がない。

残念ながら、今のデータ系の人たちは「野球史」への造詣が深く無いようだし、自分たちがやっていることを的確に説明するプレゼンテーション力も物足りない。
だから読んでいても「それがどうした」としか思えない。

テレ朝の「トラックマンだぜー、すごいんだぜー」の幼稚さはどうしようもないが、それ以外の専門家も「まだまだでんなー」というのが率直な感想だ。

20150530_073837



1968年のセ・リーグ投手陣 リリーフ詳細版


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!