NHKの「完全保存版 インディ500~佐藤琢磨・優勝への軌跡~」は本当に面白かった。いろいろと勉強になった。
一つは、インディカーの世界もすごく進化したなーと思ったこと。平成の初めのころ、私はF1の世界にのめり込んでいたが、ホンダのエンジニアの中には、「インディカーなんてブリキのおもちゃにエンジン付けて走らせてるようなもの」という人もいた。ワンメイクで、とにかく踏み込むだけのレースだと思われていたのだ。
予選プラクティスがタイムではなく、平均速度であることも、F1関係者には嘲笑の対象だった。

しかし今のインディは、F1に劣らない走る精密機械になっている。マシンの状態は逐一ピットで把握しているし、ウィングなどミリ単位の微調整もする。オーバルコースと言えば単純なコースのように見られるが、4つのコーナーそれぞれに特徴が違う。それに合わせたセッティングもしているのだ。
驚いたのは、そうしたハイテク化の一方で、インディカーがいまだにウィングカーであること。F1では35年も前に危険だからと中止になっているが、インディはグランドエフェクトを使った車がいまだに走っているのだ。もちろん、これも随分違っているのだろうが。

ピットとのやり取りのラジオも素晴らしく鮮明だ。なつかしのロジャー安川が佐藤琢磨のスポッターになっていたのにも驚いた。

昔、鈴鹿でやったときに見に行ったが、何だこりゃと思った記憶がある。今やればずっと面白く観戦できるかもしれない。

c7c43ed8294361597a5e81e7ab6b4439_m


二つ目は、佐藤琢磨の「大人」ぶり。冷静な判断ができるし、自分で自分を説明できる。日本人ドライバーと言えば、中嶋悟、片山右京のような口下手か、鈴木亜久里のようなすかした系か、という印象があったが、佐藤は知的で、冷静で、それでいてアスリートだ。アンサー家とならぶ名門アンドレッティ一家でも信頼されている印象だった。40歳、伊達に歳は取っていない。
アンドレッティは6台のマシンにトップパイロットを載せて走らせていたが、チームオーダーの在り方は「ツール・ド・フランス」を連想させる。
そうした仲間との確執を経て、最終版での熾烈なトップ争いでの「計算」は見事の一語に尽きる。
牛乳を頭からかぶるのは、あとでずいぶん臭くなるだろうと思ったけれど。

d3f8bd1d55268f100918a878b4a48ae2_m


三つ目はNHKの仕事のすごさ。レース前にアロンソはじめライバルのドライバーにも綿密な取材をしているし、コーナリングのGのすごさをビジュアルで見せるために自衛隊の施設で別途に実験映像を撮っている。サーキットでの練習走行もフォローしているし、エンジニアなどスタッフにもしっかり話を聞いている。
だから「インディ500の優勝」という偉業の本当の意味がひしひしと伝わってくる。これはドライバーの壮挙であるだけでなく、アンドレッティ家、スポンサーなども含めた大きな組織の「事業の勝利」でもあるのだ。
なぜか前年優勝者アレクサンダー・ロッシの名前を言うことができなかったようだが、どういう事情だろうか?

もちろん昨夜はオールスター戦を見ていたのだが、終わり頃にはもう気持ちが離れてしまった。
個々のプレーは真剣勝負ではあったが、どちらのチーム、ナインにも「どうしても勝たなければ」という執着はない。
テレ朝の放送も薄っぺらだ。「トラックマン」が不評だと知ると2日目にはもうやめてしまった。このシステムの導入のために、何時間くらいかけたのだろうか、30分?1時間?スタッフも出演者も、何の思い入れもなさそうだ。

プロ野球はモータースポーツの現場と同じくらい、いや、むしろそれ以上に面白い。複雑な物語が錯綜するし、超人的なパフォーマンスも頻出する。それは自信を持って言えるが、その「どっしりとした面白さ」を伝える技術は、今の民放にはないのではないか。
「感動」は、対象物の中に存在するという自明のことさえ理解せず、アナウンサーが絶叫し、ちょこちょこと画像を編集すれば「感動」が生まれると思っている民放は「本物って何なのか」わかる人はもういないのかもしれない。

NHKBSのMLBの総集編も、毎度毎度見ごたえがある。「球辞苑」も最高だが、民放には作れそうもないから、NPBの本格ドキュメントも作ってくれないだろうか?



1968年のセ・リーグ投手陣 リリーフ詳細版


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!