「記録」は、リーグの独立性を担保するうえで非常に重要なファクトだ。だから、他のリーグとは合算しない。
言い換えれば、記録を合算してしまえば、それはリーグではなく「地区」になってしまう。
インターリーグが始まるまで、異なるリーグのレギュラーシーズンでの対戦はなかったから、これを合算することも妥当ではなかった。

ただし選手の通算記録は、リーグが異なっても合算する。
それはア・ナ両リーグが「同格」だからだ。
アで打った1本のヒットとナで打った1本のヒットには同じ価値がある。ア・ナ両リーグを「国」に例えるならば、両国は1:1の為替レートで「記録」という「通貨」を流通させているという解釈が成り立つ。だからと言って「両国」の経済=記録は、統合されているわけではない。独自性が保たれている。

ちなみにMLBでは消滅したアメリカン・アソシエーションやフェデラル・リーグもMLBの通算記録に入れるという見方が大勢を占めている。様々な確執があったにせよ、ひとたびMLBを名乗ったリーグは尊重しようという考えだ。

横道にそれるが、NPBとMLBの記録を合算させるのが妥当でないのは、NPBとMLBが「同格」とは見なされていないからだ。日本側が勝手に騒いでいるだけで、MLBではNPBを同格だと公式に見なしたことはない。さらにNPBの1安打がMLBでは何安打に相当するのかは、一度も検証されていない。レートもルールも決められていない。
ドルと円、円とウォンがそのままでは合算できないのと同様の理屈で、NPBとMLBの記録の合算には妥当性がない。

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さて、MLBの背中を追いかけて発展してきたNPBは、戦後、二リーグに分立する。レフティ・オドールなどMLB関係者がプロ野球の発展のためには二リーグ分立すべきだと助言をし、実質的な日本プロ野球のファウンダーである正力松太郎がこれを推進しようと考えた。

公職追放の身分だった正力は、毎日新聞にプロ野球への参入を働きかける。終戦直後は「野球バブル」というべき状況で、どんな試合でも観客が押し寄せたから、二リーグ分立の話が起こると多くの企業が参入しようとした。

既存球団の多くは2リーグ制になると市場、ファンを奪われると反対した。その急先鋒は、正力の留守を預かる讀賣新聞=巨人だったが、正力はプロ野球の市場拡大のために必要であると考え、二リーグ制を推進した。

当時のプロ野球は「興行」的側面が強く、また新聞社という全業種の中で最もモラルが低い企業が中枢にいたこともあって、横紙破りの引き抜きが横行した。
最もひどかったのは阪神から毎日への選手の大量引き抜きだった。

旧球団を主体とするセントラル・リーグと新球団を主体とするパシフィック・リーグの関係はこじれにこじれた。
分立1年目の1950年は、オールスターゲームも開催されなかった。

両リーグは日本野球機構の傘下にあったが、一方のリーグの決定に他のリーグが従うことは滅多になかった。また、選手や客の奪い合いもあった。
1954年にパが高橋ユニオンズを設立した際には、関東地区でのフランチャイズが侵略されることを恐れたセは新日本リーグという二軍リーグを組織し、ユニオンズにぶつけている。

1965年のドラフト導入には、珍しく両リーグが同意したが、パが1973年に二シーズン制を導入した際も、1975年にDHを導入した際にも、セは同調しなかった。

セ・パ両リーグがシーズン記録を合算しないのは、MLBと同様、両リーグが「独立したリーグ」だからだ。
さらに歴史的経緯を考えても、合算しないのは当然である。

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2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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