2014年、甲子園を「残酷ショー」と看破して度肝を抜いた松谷創一郎さんが、今年も鋭い高校野球批評を展開している。
“プロ部活”のための夏の甲子園──ますます空洞化する「教育の一環」
甲子園は、年ねん私立高校が出場する比率が増加している。
公立高校と私立高校の比率は、学校数では3:1程度だが、甲子園出場校は私学が83.7%、9:1に近づいている。
練習環境を整備し、広域から優秀な選手を集める私学と、公立の格差は広がる一方だ。
春の甲子園に設けられた「21世紀枠」は、実質的に「公立救済策」だと鋭く指摘する。

私も「東洋経済ONLINE」で書いているが、福島県、高知県、栃木県などで甲子園の「寡占化」が進んでいる。
こうした地域の高校球児は、予選が始まる前から結果がほとんどわかっているし、野心も抱かない。こういう状況が長期化すれば、競技人口も減っていくだろう。

IMG_5148


高校の取材をいろいろやってきた経験から言えば、「私学の高校野球ビジネスモデル」は、近年明らかに進化している。
高校の知名度、イメージアップが目的なのは変わらないが、今は、それが「生徒獲得」へ向けた精巧なシステムへと変貌している。

今も昔も多くの野球部員を集めるのは変わらないが、昔はふるいにかけて大部分を脱落させていたのに対し、今は、レギュラー、ベンチ入りできない生徒も、二軍、三軍などを作って退部しないように仕向けている。もちろん、学費を確保するためだ。
つまり、多くの「補欠野球部員」が、卒業まで在籍する。しかも彼らのかなりの部分が、大学に進学する。Fランといわれる大学が受け入れ先になる場合も多いが、新興大学の中には高校同様「野球で学生集め」を意図する大学も多い。こういう大学の野球部に進む場合もある。また、野球部員に対する受験対策も強化されている。

かつては、野球強豪私学は偏差値が低く、野球進学以外は望めなかい場合が多かったが、今は優秀な野球部員を集めるのと同様に、勉強が優秀な生徒を並行して集める学校が多い。
大阪桐蔭や、作新学院などは、東大京大をはじめとする国公立大、有名私大への進学実績も上がっている。
もちろん甲子園に行く生徒と、東大に行く生徒は、募集も、カリキュラムも、進路指導も別物だ。
「文武併道」とか「文武別道」と言われるやり方だ。

私立高校の取材に行くと「普通の生徒」「野球部」「進学」と、全く違う高校生活を送っている生徒が、一つのキャンパスにいることを実感する。
案内する教員は、それを何とも思っていないが、昔から学校取材をしてきた者としては違和感を抱くことも多い。

要するに「教育マーケティング」が進化し、進学、甲子園などニーズに合わせた様々な生徒を集めているのだ。

しかし、それもこれも「金」があってのことだ。教育費を惜しまない親がいてこその話だ。

一方で、高校の学費さえ自分で稼がなければならないような子供もいる。そういう子が通う学校は「卒業させるのが精いっぱい」だ。将来展望など望むべくもない。
「東洋経済ONLINE」でも書いているが、高校野球の現場からも「格差社会」を実感することができる。

連合チームの惨状は、当サイトで何度も紹介してきた。

IMG_4943


高野連や朝日、毎日などのメディアは、「高校野球賛歌」を声高に歌いこそすれ、こうした現実に正対していない。
高校野球は「教育の一環」を標榜するが、その教育の現状がどうなっているか、から目をそらしている。



2004年岩瀬仁紀、全登板成績


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!