見識のある読者の方でも、勘違いされている場合があるが、これからの幼児相手の野球普及活動は、これまでの「少年野球教室」とは別物である。
これまでの子供相手の野球教室は「野球を知っている」「当然、野球が好き」な子供を対象とするものだった。多くは、ユニフォームを着て、グラブをもっているような子供だ。
そういう子供に「競技としての野球」を教え、「野球選手」としてのマナーや、技術を教えるのが、これまでの野球教室の目的だった。
年齢は概ね9歳以上、用具やユニフォームに金をかける。やがてそういう子供は、リトルリーグに進み、硬式球を手にし、高校野球へと進んでいく。

そういう野球教室は、これからも必要だろうが、こういう普及活動をいくらやっても「野球離れ」を食い止めることはできない。

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今の「野球離れ」は、それより下の世代に起こっている。低学年以下の子供が「野球と触れ合う」「野球が好きになる」機会を損失していることから起こっている。

昔の子供は、主として地上波テレビで野球と出会った。父親など家族と野球中継を見て、学校でプロ野球のうわさをし、放課後に空き地や公園で三角ベースなど「野球ごっこ」に興じて、野球を知り、好きになっていった。
そうした子供の中には「野球教室」に行って、野球選手になった者もいたが、大部分は本格的に野球をすることなく大人になった。
今の野球ファンの多くは、こういう人たちだ。野球が好きで、試合を見るのが好きだが、競技としては「草野球」程度の経験しかない。硬球を使って野球をしたことがない。そういう人たちが、球場に駆けつけ、雑誌やグッズを買い、ファンとしてプロ野球、高校野球を支えてきた。
いつの時代も、野球の競技人口は、1学年で5~7万人程度。同い年の男の子は日本では50万人以上いるから、圧倒的に本格的に野球をしたことがない人の方が多いのだ。そういう「素人の野球ファン」が、野球人気を支えていた。

近年、プロ野球中継の衰退、公園や空き地など「野球ごっこ」ができる環境の消滅、さらには時代遅れな野球の指導や規律などを嫌う人の増加によって、子供世代での「素人の野球ファン」が絶滅しつつあるのだ。

「野球危機」の本質は、そこなのだ。「競技者予備軍」ではなく「素人の野球ファン予備軍」が減少している、あるいは絶滅しつつあることが、最も深刻な話なのだ。

「競技者予備軍」も減ってはいるが、コアな競技者は、減っていない。プロを目指すような人材は今も続々生まれている。ハイレベルの競技者はこれからも間違いなく出てくる。

しかし彼らのプレーを観戦し、声援を送るような「野球ファン」は、これから確実に減少する。「野球ファン」はコンシューマーであり、お金を出して野球界を支えてきた。
そういう人たちがいなくなれば、野球界は経済的に行き詰る。近い将来、そういう時代が必ず来る。
「野球離れ」が「野球危機」だというのは、そういうことなのだ。

これを理解しないと、今、野球界が取り組もうとしている普及活動が理解できない。

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2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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