つまり、今、始まっている野球の普及活動は「野球選手」を作るものではなく、その前段階の「野球好き」を作ることを目的としている。
「シリアスな野球競技者」を育成するのなら、マナーや技術は当然必要だ。真剣勝負の試合をするためには、それなりの規律も運動能力も必要だからだ。

しかし「素人の野球ファン」を作るためには、そういうものは一切不要だ。目的は「野球って楽しい」と思わせることなのだから。
子どもたちに野球を好きになってもらうのが、唯一無二の目的だ。
大人が、「こら、みんな揃ったら挨拶だ!」とか「グランド3周」とか「ボールは腰を落として取れ」と言えば、子どもたちは一瞬で生気を失う。そして野球を好きではなくなる子もでてくるだろう。

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言い換えれば、今の野球の普及活動は、昔の子供が勝手にやっていた「野球ごっこ」を大人の手で復活させる取り組みなのだ。
子どもたちの「野球ごっこ」には、挨拶やマナーは無縁だった。技術も練習もなかった。あったのは「野球ごっこ」だけ。仲間が集まっていきなり始まる三角ベースのようなものだけだ。

その中から「野球ごっこ」に飽き足りず、シリアスな選手を目指す子供も出てくるだろうが、それを生み出すのが目的ではない。ひたすら「野球を好きになってもらう」ためだけの普及活動なのだ。

西武ライオンズは、すでにそういう取り組みを3年前からやっている。DeNAベイスターズも取り組んでいる。

6月に西武ライオンズの取り組みを取材したが、担当した石井丈裕コーチは、「この教室では、あいさつとか、規律だとかは一切言わない」と言った。
ひたすら子どもと親に、「野球ごっこ」の楽しさを感じてもらうことに徹していたのだ。

「それでもそういう教室は、段階的に挨拶や技術も教えるようになるんでしょ?」

と思われるかもしれないが、そうではない。それはべつの野球教室の役割だ。

今から大々的に始めるべき野球の普及活動は「野球遊びを知って、好きになって、続けてもらう」それだけを目的にする。

ちょっとだけやってやめてしまっては、元も子もない。こうした活動を、全国で10年、20年単位で続けて、何万、何十万という「野球好きの子供」を生み出すことが何より重要なのだ。

読者各位はお分かりいただけただろうか?

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2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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