一昨年、叩かれまくったラガーさんこと善養寺隆一さんは、あれからも休むことなく甲子園の大会に顔を出している。私は大会のたびに1~2回甲子園に足を運ぶが、必ずその存在を認めている。
昨日は外野席からだったが、120m越しにその存在ははっきり確認することができた。

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Laggerさん


周囲には「8号門クラブ」と思しき面々の顔も見える。彼らも消えてはいないのだ。

私はラガーさんがバックネット裏に陣取っていたこと自体は何の問題もないと思う。「8号門クラブ」も同様だ。熱心なファンが朝早くから詰めかけることを非難する筋合いはない。
ただ、彼らが不当な「利権」を主張し、席を独占し、あまつさえせこい商売をやっていたこと、そしてラガーさんが本を出して(そのこと自体は問題ない)、メディアに変な露出をし始めたことには違和感を抱いたし、甲子園の歪んだ実態が端的に表れたと思っていた。そのようにブログにも書いた。

しかし2016年の夏、ラガーさんは炎上した。個人攻撃が集中した。ラガーさんが客席で居眠りをしていることが非難された。自分で切符を買って席に座って何をしようと自由なはずだが、愚劣なネット民の攻撃の対象になったのだ。

ラガーさんの周囲には警護の人がつくようになった。私はラガーさんと同じ出版社から本を出したことがあるので「Spa」から取材を受けたが、本人は茫然としてしまってほとんど言葉が出なかったようだ。
アマゾンのラガーさんの本のコーナーには、ラガーさんをこき下ろす心無いコメントが120本も載った。住所や家業の印刷会社の情報もさらされ、仕事にも影響が出たようだ。

change.orgには「甲子園のバックネット裏は八号門倶楽部のものではありません。一部団体の私物化に抗議します」という記事が上がり、7000人を超える署名があったという。

確かに「8号門クラブ」には、自分たちに特権があるかのようにふるまう人がいたし、排除すべきだったと思う。しかしラガーさんは、ただ野球を見ていただけだ。
少なくとも、彼が野球を見る権利(席で居眠りすることも含めて)を非難する資格は誰にもない。

change.orgは、私も署名したことがあるし、今の日本では大事なサイトだと思っているが、議論が分かれそうなテーマで、正義面した一方的な主張を掲載したことは大変ショックだった。
匿名性が担保されたネットでは、卑怯者がやりたい放題することがしばしばある。その一つだと思えた。

高野連、朝日新聞、毎日新聞は予想通り、自分たちの管理の不手際に言及されるのを恐れて、この訴えを黙殺。翌年春からバックネット裏に少年野球チームを招待して座らせる「ドリームシート」を設けた。今年も炎天下、野球少年のぐたっとした顔が並んでいる。

ラガーさんの「有名人」としてのステイタスはなくなり、ご本人も大層傷ついたと思うが、それでも彼は甲子園に通った。「ドリームシート」の真横の席で野球を見続けた。これは、彼が売名行為や何らかの利得で甲子園に通っていたのではないことを意味しているだろう。「8号門クラブ」には質の悪い人間もいただろうが、そうでない人もいたわけだ。


ネット民の中には「自分は匿名という安全な立場にありながら、他人には最大限の誠意を要求し、できないと言って非難、罵倒する」輩がいる。彼らは、非難された対象が失脚するのを見て喜んでいる。個々の人間は臆病で何もできないが、ネット上では凶悪になる。最低の連中だと思う。「正義」の二文字は、こういう愚劣な連中の登場で大きく変質した。

ラガーさんは、ネット民に噛み散らかされ、ぽいっと棄てられたのだ。でも彼は、それでも自分が好きなことをやめなかった。そのことは強調しておきたい。

試合の後、甲子園のイオンの1階で、ラガーさんに出会った。名刺交換をして何度か話したことがあったが、彼は目をそらして話そうとはしなかった。
両手に段ボールを一杯抱えている。これで今日のねぐらを作るのだろう。
甲子園イオンと言えば5月末での閉店が一度決まったが、食料部門だけで辛うじて存続している。
これがなくなれば、ラガーさんは外野の向こうのららぽーとに段ボールを取りに行くことになるのだろう。

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率直に言って、その姿には悲惨さが漂っていた。ホームレスのようなことまでして甲子園での観戦に固執する姿は、見ていてつらかった。

この不条理は、今の日本のゆがみを象徴している。

2年前、あれだけ騒いだネット民各位は、このことをどう思うのか?ラガーさんの社会的地位を粉みじんに破壊し、失脚に追いやった人たちは今の彼の行為をどう感じているのか?もう済んだことなのか?
「非難し過ぎた」「やり過ぎた」ことを後悔しているのだろうか?フォローをしようとは思わないのか。

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2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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