坂原監督が、衝撃のコメントをした下関国際だが三本松に4-9で敗退した。
牛や馬を仕込むように選手を仕込み、強制的に練習をさせる。「文武両道」などありえないという坂原監督のコメントは、それが現在の高校野球の一面の真実を衝いているだけに衝撃的だった。

「教育の一環」「青春の汗」など、歯の浮くような美名の裏側で、どれだけ過酷な競争が起こっているか、教育の名には値しない指導が行われているかを、歯に衣着せず口にしたことは、高校野球が今抱えている「本質」をさらけ出す意味があった。

一つは、「甲子園に出る」ということが、学校、地域、個人にとってあまりにも大きな報酬になっているということだ。たかが高校生の野球大会が、全国の注目の的となり、活躍すれば一躍スターとなる。その後の人生も大きく変わってくる。
出場校の名前も一気に上がる。問題がある学校も、偏差値が低い学校も、有名校になり、美名が全国にとどろく。
その報酬のためなら、子供をどついて野球させることも、馬鹿な金をかけて環境や用具を整えることも、全くいとわない。
全国にはそうした「成功体験」を持つ学校、そして高校野球に端を発して「有名校」になった学校がたくさんあるのだ。

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下関国際は、地域では最低の成績の子供が行く学校だった。野球をしなければ非行に走ったり、まともな就職さえできない子供が多かった。坂原監督は、そういう子供を「虎の穴」に入れて鍛え直し、甲子園にまで連れてきたのだ。
それは確かにサクセスストーリーであり、一般論にはならないにせよ、一つの「教育」の姿だっただろう。それもこれも「甲子園」に出たからこそ言えることではある。

もう一つは、高校野球の指導がいつまでたっても変わらないということだ。一握りのエリートを選別し、彼らに全エネルギーを注入して鍛え上げ、そういう選手で試合に勝ち抜く。
そこには、本来の「部活」とは程遠い、プロ野球同然の競争があり、勝者だけがもてはやされ、敗者は一顧だにされない。
「一将功なりて万骨枯る」という言葉があるが、一握りの勝者を生み出すために、多くの骨を枯らせることが「教育」の美名のもとに平然と行われている。
サッカーが唱えるプレイヤーズファーストも、グラスルーツも、そこには存在しない。
一匠スポーツに親しみ、スポーツを通じて健康になり、社会の規律やマナーを学ぶという本来の目的は顧みられず「勝てば官軍」がまかり通っているのだ。
坂原監督は、そのことも白日の下にさらした。

この指導者をどう評価するかは微妙だが、下関国際という限定的な環境でのみ評価される指導法だったといえよう。彼は「調教師」ではあったが、一生懸命調教をし、一定の成果を上げたという点で評価できる。

では、他の学校はどうなのか。「文武両道」は存在するのか。「勝利至上主義」「エリート主義」をどうとらえるのか。
有名校、エリート校の指導者が、坂原監督同様歯に衣着せぬ直截な表現で、己が指導法を口にすれば、高校野球の風通しはかなり良くなると思うが。

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2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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