旧聞だが、8月7日、日本野球機構(NPB)の理事会と12球団による実行委員会が開かれ、「引退選手・特例登録手続き」が承認された。
 そのシーズン限りで現役引退する選手が引退試合として公式戦に出場する場合、引退試合の当日のみ(1日限定)、球団の出場選手登録に、当該選手を追加することが可能になる。
 これまでは引退試合を行うためには、1軍登録の上限28人の中から、1人を登録抹消して入れ替える必要があり、抹消された選手は10日間、再登録ができなかった。
 主な内容は以下の通り。
 <1>特例登録手続きによる同一試合の適用人数に制限はない。(1球団における1シーズン中の適用回数にも制限は設けない)
 <2>1選手に適用される回数は、ホーム、ビジターにかかわらず1回限りとする(適用された試合に出場できなかった場合、再度の申請はできない)
 <3>特例登録手続きを申請してもベンチ入り人数は最大25人とする。(例・出場登録選手数=28人・適用選手1人=29人→ベンチ入り25人・ベンチ外4人)
 <4>特例登録手続きの適用は1日限定とする。翌日は自動的に登録抹消になる。雨天等で中止になった場合は、当該球団が指定する別の試合に適用される。FAに数には加算されない。
 <5>特例を適用した場合は、当該選手はシーズン終了まですべての試合において再度出場選手登録をすることはできない(日本シリーズは出場可能)


要するに、公式戦の試合中に引退選手のセレモニーをすることで、これまで他の選手を二軍に落とさなければならかったのが、特例で1人1回に限り28人枠の外で選手登録できるようになったのだ。

言い換えれば、公式戦に真剣勝負とは言えない引退セレモニーを混入させることを、公認したわけだ。
特例であっても、打席に立ったり、マウンドに上がった引退選手が打ったり、投げたりした記録は「公式記録」として残る。
これまでも、引退選手に花を持たせるために、安打を打たせたり、三振をしたり、気持ちの悪い「忖度プレー」が見られたが、これをNPBが認めたわけだ。

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何のために?理解不能だ。

永年チームに貢献した選手の引退は、球団にもファンにも大きな出来事ではある。しかし、これは「私事」であり「公事」ではない。
そして、選手がファンに別れを告げる方法は、いくらでもある。
永久に記録が残る公式戦に、将来がなくなった選手を出場させて、茶番みたいなことをさせることを公式に認める必要はどこにもないだろう。

シーズン終盤、そういうのを目にすると、私は引退選手をねぎらう気が一気に失せる。いかにも未練たらしくて、自己陶酔気味で、くどくて「さっさとやめろ」と言いたくなる。

洋の東西を問わず、人は引き際がすべてと言われる。身を引くべき理由があって引退する人は、未練たらしくなく、厚かましくなく、簡潔に身を引くことである。
謝意を伝えるにしても控えめに「もう少しいてほしい」と思わせるくらいが美しい。

わざわざ現役選手の真剣勝負の場に割り込んで、観客の声援を浴びるのは、美しくない。美意識があるなら辞退しても良いと思う。

記録を大事にしたい私からすれば、明らかな「作為」が記録に残ることは耐え難い。

プロ野球の歴史の上で、引退試合はどんな大選手のものであれ、些事である。敢えて言うが、どうでもいいことだ。

そんなことを公式にするよりも、やるべきことはいくらでもあるだろう。



2004年岩瀬仁紀、全登板成績


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