今年のシーズンが開幕してから、菊池雄星の投球フォームは意識して改造が加えられた。このことによって「二段モーション」の疑いは強くなった。審判部はレッドラインを超えたと判断して不正投球を宣した。ここまでの経緯はこういうことだ。では、審判部の行動、判断の何が問題なのか。
「不正投球」は、一般社会の「犯罪」とは異なる。

「犯罪」は検挙率を上げ、多くの犯罪者を摘発し、社会の犯罪率を減少させていくのが目的だ。
しかし「不正投球」は、試合でこれを摘発することが目的ではない。

審判部が「不正」と判断する基準を明示し、球団、投手の側に改善努力を促して、できるだけ事前に是正させるのが目的だ。
そして「不正投球」の是正は、常に「NPB全体の問題」だ。審判部が、特定の選手に問題があると判断したとしても、その問題を球界全体が問題意識として共有しなければ意味がない。NPBには500人近い投手がいるのだ。彼らすべてが同じ認識を持たなければ「不正投球」は根絶できない。

審判部は、菊池雄星の不正を指摘して、他の投手にも是正を促す「一罰百戒」を目的にした可能性があるが、これは全く不当である。
菊池はコンペティターである。他の選手と競争をしている。そして菊池は不正を働こうとしたわけではない。MLBの投手をまねてフォームを改造しただけだ。それが「逸脱」になるとの認識はなかったはずだ。菊池だけが不正投球で挙げられるのは不公平だ。

審判部は5月頃から菊池雄星の投球フォームを問題視し、球団、菊池に直接指摘していたという。これは事前に改善努力を促す姿勢として評価できる。
しかしながら「菊池雄星の投球フォームに不正投球の伺いがあると審判部が懸念している」という情報が、NPB全体で共有されなければ、菊池同様の投球をしている投手は、そのまま投げ続けることだろう。
またファンも、いきなり「イリーガルピッチ」を宣せらる事態に出くわして、困惑し、審判部への不信感を募らせるだろう。

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審判部は、菊池雄星の投球フォームを「問題あり」と断定した時点で、球団に通告するだけでなく、記者会見を開くなり、プレスリリースを出すなりして、菊池の投球のどの部分が問題なのか。どう改善すべきなのか、を明確に指摘しておくべきだった。球界全体の問題意識として共有すべきだった。
その上で、猶予期間を置いて、菊池に改善を促すのがベストだったのではないか。
そうすれば、菊池だけでなく他の投手にもフォーム改造の猶予もできるし、混乱は最小限で食い止められた可能性もある。

西武球団、菊池雄星サイドが「事前に何の予告もなく、いきなり不正投球を宣せられた」かのような発言をしたことや、実際にはフォーム改造をしたにもかかわらず「開幕時からフォームが変わっていない」かのような言辞を弄したことは、狡猾で、不適切だと思う。
しかし「なぜ、うちの菊池だけが」という被害者意識が辻監督以下西武サイドにあったとしても不思議ではない。

菊池の不正投球を審判部が問題視した時点で、これを「球界全体の問題」にしていたら、西武球団やファンの認識もかわっていただろう。またもっと早く事態は収拾できたかもしれない。

ペナントレース終盤のこの時期になって審判部が「投球フォームの改善」を求めるのは、確かに適切とは言えない。選手やチームの成績に影響を与える可能性があるからだ。しかしことが重要で緊急性を要するのであれば、それも許容できると思う。

審判部は、このタイミングでこれを問題視するのであれば、事前にわかりやすく説明し、野球界全体の問題にしておくべきだった。

審判部の権威を守り、信頼性を高め、野球界の秩序を維持するためにも、ディスクロージャーの意識がさらに進化することを期待する。

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