山口俊の厳しすぎる処分に対して、選手会がかみついたのは、MLBっぽくてよいと思ったが、讀賣、NPBの対応は、予想されたとはいえ、がっかりだった。
選手会側は、山口俊に巨人が科したペナルティのうち、罰金が重すぎるとし、巨人側が「複数年契約の見直しを迫り、同意しなければ契約解除(解雇)するとの条件を提示し続けた」として、独占禁止法の違反やFA制度の根幹に関わると主張。巨人に処分の再検討と契約見直しの撤回を求めた。

巨人が昨日のプロ野球実行委員会で熊崎勝彦コミッショナーに提出した回答書によると、
巨人側は「処分は妥当。軽すぎるとの声が多く寄せられている」と主張、複数年だった契約の見直しについても山口俊本人が納得しており「野球協約や、選手会の言う独占禁止法に違反する事実もない」とした。

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酒に酔って人に暴力を働いた行為は犯罪であり、会社によっては解雇事由になるだろうが、一般人ならばこれは重い処分になるだろう。
讀賣新聞にだって、酒に酔って人を殴った人はたくさんいただろうが、そのうちどれだけがクビになったか。怪我の程度や暴行の悪質性にもよるだろうが、示談が成立し、不起訴処分になってもクビになるのは普通ないのではないか。クビになるのは日ごろの勤務態度などとの「合わせ技一本」のケースだろう。
山口は故障で出遅れていたが、勤務態度が悪かったわけではなし、不祥事即クビ、というケースではないように思う。またクビにならない代わりに山口が呑んだとされる3億と言われる罰金も過大だ。

今の日本では「他人の不幸」はなかなかのレートで取引されている。特に有名人の不幸は、プレミアがつく。多くの人は、不祥事の大小にかかわらず、お金持ちのセレブが奈落の底に落ちるのを見てみたいという願望を持っている。
球団までわざわざ電話をかけてくるの人の多くは、そうした「他人の不幸餓鬼」であり、天下の巨人、讀賣新聞が、それを真に受けることはないと思う。都合のよいときだけ「世間の声」を後ろ盾にするのは卑怯だろう。

本人が納得しているというのもおかしい。この状況で、組織が個人に「クビにするぞ」と迫れば、どんな条件だって飲むだろう。足もとを見て、すさまじい値引きを成功させた球団は阿漕だ。

前も言ったが「山口への投資は失敗だった」というフロント側の悔恨が根底にあって、暴行事件を奇貨としてこれを回収しようとしたのだろう。

山口は選手会が抗議したことを心底迷惑に思っているようだが、それは彼の意識が幼稚だからだ。自分がこんな過重な処分を甘んじて受けることで、これが前例になり、FA権で移籍した他の選手に迷惑がかかる、ひいては選手の権利が毀損されるという認識はないのだろう。
まあ、そのレベルだからシーズン中に泥酔して挙句に暴力沙汰を起こしたのだろうが。

「野球協約に違反する事実はない」というが、NPBの野球協約はザル法になってしまった。
昨年来、違法賭博場に出入りした事実が明るみに出ても、トトカルチョで金を賭けていた事実が発覚しても、球団側は「野球協約違反ではない」と言ってきた。
そういう形で、プロ野球の憲法である野球協約を有名無実のお題目にしてしまったのだ。嘆かわしいことだと思う。

法の番人たる検事出身の熊崎勝彦コミッショナーは
実行委員会で意見を求めた結果「球団と選手間の案件であり、現時点では処分が重すぎるとか不当であるという意見はなかった」と話したという。
町内会の役員でも、もう少しまともな対応をするだろう。
経営者側から「処分不当」の声が出ることはない。選手や選手会の言い分を聞き、事実関係を確認したうえで、バランス感覚のある答えを出すのが、法律家出身であり、プロ野球の最高権力者たるコミッショナーの仕事ではないのか?

もうこの手の生体反応さえ怪しいようなコミッショナーは、熊崎さんで最後にしてほしい。NPBも各球団も、意識改革が進み、野球界全体のことを考えるようになっていることを実感するが、トップがこれでは嘆かわしい。

讀賣、NPBは本質的に何も変わっていないことを確認させられたのは、誠に残念なことだった。


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