涌井秀章がMLBを目指す同機は、単純ではないだろう。
涌井は、3年7.5億円という大型契約を結んだばかりだ。残り2年を破棄してまで海外FA権を行使しようと思った動機は単なる金銭とは考えにくい。

涌井とて今の自分の力はよくわかっているはずだ。主力級の先発投手ではあるが、同い年のダルビッシュと覇権を争ったような力はもはやない。速球は140km/h代前半だ。
被安打、被本塁打も増えている。もともとパワーピッチャーではないが、今は打者を圧倒するのではなく、技巧と駆け引きでかわす投手になっている。

MLBで活躍できるかどうかはわからない。それ以前にMLBの球団がまともなオファーをするかどうかも微妙だ。
和田毅や前田健太などエース級ではあったが抜群とまでは言えないクラスの投手が足元を見られてやや不利な契約になったことを考えても、芳しい評価が得られるとは思えない。

しかし、涌井はロッテを出て海外に挑戦の意向を示した。
その背景には、伊東勤監督の辞意表明があるだろう。
伊東監督は涌井と同じ西武出身、ロッテ監督に就任してからは乏しい戦力で何度もポストシーズンに進出した。現有戦力をまとめ上げ、何とか3位に滑り込む手腕は高く評価されている。
しかし、それにも限界がある。選手が高齢化しているのに捗々しい補強をしなければ、今年のように破たんを迎えることもある。

伊東監督は「チームを強くすること」にいっかな熱意を示さないロッテ球団に幻滅したこともあり、辞意を表明したとされる。

ロッテは辞意を表明しようとした伊東監督を引き止めたというが、それは「補強を約束」したことを意味しない。「ポストシーズンにでられなくてもいいから、残留してほしい」というものだったと思われる。

「保有すれども補強せず」というやる気のない球団に、伊東監督は愛想をつかした。そして涌井も同様だろう。
多くのプロ野球選手は、自らの栄達とチームの優勝を車の両輪のように考えている。特にエースと言われる選手はそうだ。充実した野手陣を背景に、存分に投球したい。そう思う投手が多い。

ロッテ球団はそうした思いに応えてくれそうにない。伊東監督の退任で、その思いを強くしたのではないか。

プロ野球選手は寿命15年から20年の短命な生き物だ。10年先の経営改革を期待して現状維持を決め込むことはできない。32歳の涌井には残された時間はほんの数年だ。そういう思いもあっただろう。

NPBには「本気でビジネスを志向する球団」「老舗の看板に固執する球団」「面子で球団を持っているだけの球団」の3つに分類できる。その中間の球団もあるが、残念ながらロッテは3番目のグループだ。

涌井の決断の背景には、球団、そして親会社のスタンス、姿勢の違いがある。そう考えれば、彼の一見無謀なチャレンジも納得できるのではないか。

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