少し前に書いた「『若さ』はカネでは買えないということ」というブログに対して、まだ五月雨的にコメントをいただく。納得いかないと考える向きも多いのだ。舌足らずであったかもしれない。もう少し説明しておきたい。
まず、「巨人は最近でも成功しているではないか」という反論。
確かに2007年のクライマックス・シリーズ開始以降、全部のポストシーズンに進出しているのは巨人だけだ。
クライマックスシリーズの最多安打は阿部慎之助だ。そして巨人は21世紀以降の16年で7回もペナントレースを制している。セの他の球団が1度も果たしていない3連覇を今世紀だけで2回も達成している。21世紀以降に限定しても、セの最強チームは巨人ではないか、と。

どういう方法であれ、勝てば成功だというのなら、これはその通りだろう。確かに数字だけを見れば、巨人は一番成功したチームだと言える。

しかし、この間、巨人は生え抜きで規定打席に達した野手は阿部慎之助、長野久義、坂本勇人、亀井義行(現善行)、脇谷亮太、小林誠司の6人しか生んでいない。投手で規定投球回に達した生え抜きは、木佐貫洋、内海哲也、東野峻、澤村拓一、菅野智之、高木勇人、田口麗斗の7人。他のレギュラー選手は外国人選手か、FAなどでよそから連れてきた選手である。
17年と言えば1人の選手の選手生命に等しい長い時間だ。その間にこれだけしか生え抜きのレギュラーを作れなかった。彼らのうちで長く活躍した選手はさらに少ない。

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これまでも説明しているように、外国人もFA選手も、ピークを過ぎてから巨人に来るから通用する期間は短い。多くは数年でダメになり、ファームでごろごろするようになる。
本当であれば、助っ人が活躍しているうちに若手選手を育成して、衰えた助っ人の後釜に据えればよいのだが、巨人は育成に力を入れず、あるいは育成の仕方がよくわからず、選手が育たないために、次から次から選手を補強することになる。それでも巨人は他球団と同様、ドラフトで選手をたくさん獲得する。彼らの多くは活躍することなく捨て石で終わるのだ。

だから若手が腐る。野球賭博などおかしな事件が頻出するのだ。

生え抜きは取るが育てない、他球団からとってきた選手を使い廻しする、そういうやり方で巨人は何とか勝ってきた。

こうした傾向が顕著になったのは第二次長嶋政権以後だと思うが、以後の巨人は、選手の無駄遣いをすることを何とも思わなくなった。活躍しない選手に捨扶持を与えて二軍で飼い殺しすることも平気になった。

特に日本ハム、ソフトバンク、広島、DeNAなど、育成した選手で勝つチームが出てきた昨今、そんな浪費癖が強い成金巨人を「成功例」に加えるのは抵抗感がある。あれだけ金(表、裏含む)を使って、これだけしか勝てないのか、という感が強い。

巨人が補強と育成の2本柱で行きたいと思い始めていることは、三軍の創設でも見て取れる。ソフトバンクのように自前の戦力で勝つべきだという意見が、球団内に起こっているのだろう。
しかし、選手を大事にせず、捨て金を何とも思わない体質が染みついているために、巨人の若手選手はなかなか育たない。そもそも選手を育てるにはどうしたらいいかがわかっていない。

広島などは絶対に赤字になれない前提で、とってきた選手を大事に育てる。そして選手が育ったと思ったら、すぱっと入れ替える。内野の東出、栗原、梵、外野の廣瀬、天谷、抑えの永川などは生え抜きの後進にポジションを奪われ、一軍で姿を見なくなった。東出、廣瀬はそのまま引退、栗原は移籍した。
私はすべてのプロ野球選手のファンだ。まだ少しやれそうな選手がこういう形で消えていくのは忍びない気もするが、広島のやり方には一定のポリシーがある。「育てる」と決めた選手は試合に出して「使える」となったら、躊躇なく入れ替えるのだ。
巨人のように同じポジションに何人も選手をあてがって「競争」と言いながら誰も活かすことができずに多くの選手を腐らすようなことはしない。広島はお金がないから無駄遣いはしないのだ。

先週、私は舞洲の二軍戦でソフトバンクの長谷川勇也が打席に立つのを見た。元首位打者の長谷川だが、故障もあってくすぶっている。その間に、中村晃が出て、上林誠知が出て、柳田悠岐と外野陣を組んだために、長谷川は出る幕がなくなった。同様に、NPB史上屈指の右打者の内川聖一もこのままでは、レギュラーが危ないだろう。機会は当然与えられるだろうが、立場は保証されない。
二人は故障した、その間に若くて良い選手が上がってきた。そしてポジションを奪われた。野球界の「世代交代」とはこういうことだ。ちゃんと理屈があるのだ。
巨人のように、ベストナイン、ゴールドグラブを取った村田修一に、翌年マギーをぶつけるようなおかしなことはしない。

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ソフトバンクは讀賣グループの15倍もの売り上げを誇る巨大企業グループだ。資金は潤沢にある。しかし、あほみたいな補強はしない。
一昨年、李大浩が抜けて主軸の穴が開いた。そのために2016年は2位に甘んじた。だから今年、そこにロッテからデスパイネを引っこ抜いた。それによって柳田悠岐へのプレッシャーが減じられ、柳田は息を吹き返した。道理にかなっているのだ。
ソフトバンクは金持ちで、巨大な補強ができるが、それはまず「育成」に投資される。「育成」がうまくいく前提で、選手の補強はそれを「補完」するために行われる。使い方にポリシーがある(松坂大輔はオーナーの道楽ではあるけども)。

巨人のように、選手も、お金もじゃぶじゃぶ無駄にして、辛うじて勝ち星を獲得するようなやり方を「ビジネスモデル」と言えるだろうか?

それでもそうした成金三昧が今後も続けられれば、おめでたいファンは喜ぶのかもしれない。

しかし新聞業界は代表的な斜陽産業である。親会社の支援にも限界がある。巨人は幸いにも黒字球団だが、独立採算を考えれば、二軍に億の年俸の選手がごろごろしているような状況は今後、許されなくなるだろう。
三軍を作ったのもその危機感からだと思えるが、巨人は今後、好むと好まざるとにかかわらず、体質変換を迫られるはずだ。


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