清宮幸太郎が今、巻き起こしている一連の騒ぎは、MLBでは起こり得ない。MLBのドラフトは完全ウェーバーだ。日本でいえば前年日本シリーズで負けた方のリーグの最下位チーム、中日に指名権がある。
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日本は1965年にアメリカに真似てドラフト制度を導入した。選手獲得コストの高騰と戦力の不均衡を是正することが目的だったが、これに反対する巨人などが上位選手のみ「くじ引き」という日本独自の仕組みをねじ込んだ。
以後、日本のドラフトはMLBとは違う形で続けられた。しかしこの間、巨人、セ・リーグの相対的な地位が落ち、他球団やパ・リーグのステイタスが向上したことを見れば、ドラフトは大成功だといえよう。

30年ほど昔、報知新聞の白鳥晋は、玉木正之との対談で「巨人を中心とする1極集中がプロ野球の理想の形」と言った。
この人は素晴らしいジャーナリストだと思うが、この人をしてそういう考えだったのだ。

2005年の球界再編後の大きな変化を経て、今、「巨人中心主義」を唱える人はいないだろう。また当の巨人自身もそんなことはさらさら思っていないはずだ。

しかしながら、くじ引きという奇妙な仕組みはいまだに残っている。そのことで日本のドラフトは、あたかも事前交渉の余地があるかのような錯覚を与えている。

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日本のドラフトがMLBと違う点は、まだある。ごく一握りの選手に注目が集まることだ。
今年でいえば清宮と広陵の中村奨成などに集中している。
過去のドラフト実績を見れば、ドラフトの超目玉で入団してダメだった選手もいるし、全く無名で入団して偉大な実績を上げた選手もいる。ここまで集中しなくてもよいように思う。

MLBが毎年6月に実施するドラフトには1400人もの選手が指名される。玉石混交だが底辺が大きいから、中にはすごい「玉」が含まれている。
感心するのは、ドラフト上位選手の「確率」の高さだ。ドラ1選手は投手、野手ともに成功する確率が非常に高い。

それはアマチュア野球のスカウトマンやアナリストのネットワークが充実しているのが大きい。最近は、スピードガンだけでなくトラックシステムで10代の子供の球筋を計測する会社もある。
もう一つ言えば、米のアマチュア野球はリーグ戦が主体であることも大きいだろう。同じくらいの実力のチームで構成されたリーグで、選手は多くの試合をこなす。大きなデータにもなるし、信ぴょう性の高い数字にもなる。
つまりアマの段階で「この選手はどのレベルか?」が大体わかるのだ。

しかし日本は、トーナメントが中心で、客観的な実力を知ることができる試合数が絶対的に少ない。
甲子園の予選は公立の弱小校と私学の強豪校が当たる。こういう試合で本塁打を何本も打ったり、ノーヒットノーランをしても信頼に足るSTATSとはとても言えない。清宮の111本塁打などその類であって日本の一流メディアが真剣に取り上げるようなしろものではない。
日本にもアナリストはたくさんいて「○○投手の2シームはすごい」などとレポートするが、それも主観であって客観性はない。
結局、日本の有望選手は「イメージ先行」になる。甲子園で活躍した、大きな本塁打を打った、それがその選手の才能のどれだけの部分なのかはほとんどわからないまま、イメージで評価が定まるのだ。

日本で、大物選手が登場するたびに起こるこうした「フィーバー」が滑稽なのは、日本のメディアが無責任に騒いで作り出したブームに球団がのっかっているように見えるからだ。

清宮はどこまでプロで通用するのか、本当にMLBまで行くのか。
数年たって「ポスティングシステムがどうの」と言っていたことが冗談のように聞こえる可能性さえあると思う。


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