ドラフトの前に、球団関係者が選手や親、学校にあいさつ回りをするのは、ごく当たり前のことだ、という指摘があった。ちょっと違うと思う。
そういう「挨拶」は、日本の社会儀礼上、普通に行われる。ごくまれにそういうことをせずに、いきなり指名をするケースがあるが、監督や選手の親などは「挨拶にも来ずにいきなり指名するとは何だ!失礼な」と怒ることもある。入団に結びつかないケースもある。

清宮の場合は、そうしたやりとりが、すべてカメラの前で行われていることだ。
プロ志望会見はもとより、球団の「挨拶もうで」までもがカメラの前で行われ、各球団が清宮家に対して、どんなプレゼンテーションをしたかを説明させられた。
こうなれば、普通の「挨拶」とは次元が違ってくる。

この時点で「球団」と「清宮」は「同格になった」という印象を世間に与えた。

ただ、こういうケースも過去には何度もあった。古くは江川卓がそうだし、桑田真澄、清原和博、松井秀喜もそうだった。
そういう意味では清宮も過去の超目玉選手と同じだと見られるかもしれないが、決定的に違うのは、清宮は「実績がない」ことだ。

江川もKKも、松井も、世間が注目したのは甲子園で活躍したからだ。江川は地方大会の段階から注目度は高かったが、「怪物」と言われたのは甲子園で快投してからだ。KKも松井秀喜も甲子園が実質的な「デビュー」だった。

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しかし清宮は、甲子園に出る前から超有名人だった。正確には中学生の段階で、自宅にカメラが入って彼専用の練習ルームがあることが世間に知られた。地方大会に出るときには、カメラの砲列が並んだ。
甲子園に出ないうちから清宮幸太郎は「高校野球随一の目玉選手」だったのだ。
彼の甲子園での実績は、夏1回、春1回で7試合28打数12安打2本塁打8打点だ。好成績ではあるが、チームは準決勝が最高で、優勝も決勝戦も経験していない。この程度の成績で「大目玉」になることは、普通考えられない。

昨年は甲子園に出ていないし、今年の夏も敗退した。しかし清宮幸太郎は「高校野球最大の有望選手」になったのだ。
本来ならば今年の高校野球の目玉は、甲子園で清原和博の記録を抜く6本塁打を打った広陵の中村奨成になるはずだが、注目度では夏の甲子園に出ていない清宮がはるかに上だった。

おそらく、清宮の父が有名なラグビー指導者である清宮克幸だったことも大きいだろう。
清宮パパは、メディアと太いパイプがある。パパを通じていろいろな情報がメディアに流れただろう。
メディアは、他の選手よりもはるかに多くの清宮情報を得て、取材を拡げていった。
つまり、清宮幸太郎は、自分のサイドから進んで「コンテンツを提供した」と言う見方もできよう。

清宮幸太郎は、高校で1試合も出ないうちから注目選手になったが、この時にメディアと清宮側の合作による「清宮劇場」の幕が開いたということではないか。
高校通算111本塁打という「お話」は、甲子園での実績に乏しい清宮が「主役」「スター」であり続けるために必要な「箔付け」だったと言えよう。

「清宮劇場」は、清宮のプロ入りによって「第二幕」に入る。メディアや清宮サイドは「プロでも大物ぶりを発揮して、たちまちスター、MLBが視野に」という筋書きを想定している。
もちろん、そうなればNPB、野球界にとって素晴らしいことだが、「ふたを開けてみればまだまだで、苦労の連続」とか「からっきしだめで、いつの間にか忘れ去られた存在に」という可能性さえある。そういう例は少なくない。近くはハンカチ王子、斎藤佑樹もそういう形で失速した。

これからは「期待感先行のお話」から「ドキュメント」へと移行していく。
話題先行の「清宮劇場」はどう展開するのか、醒めた目で見ていきたいと思う。

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ルーキー最多安打レース

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