私が手にしたときにすでに3刷、よく売れているが、ブラック部活の最たるものという印象がある高校野球を考えるうえでも重要だ。
この名古屋大学の先生は、けが人続出の「組体操」が問題になったときに、テレビによく出ていた。金髪で、なにやら際物っぽく見えたが、取り組みは真摯で真剣だ。金髪には何らかの意味があるのだろう。

この本は主として中学の部活が過熱気味となり、生徒も先生も一年中休むことなく部活を「やらされる」状況になった過程を、主として先生の側から取り上げている。

今、中学の部活には、ほぼ強制的にすべての先生が顧問に就かされている。体育系、文科系問わず今の部活は放課後も、土日ぶっ通しで行うようになっている。
先生方は、ほとんどプライベートもないままに部活に打ち込むことを強制されている。
悲惨なことに「部活顧問」は自主的に参加することになっているので無給であり、交通費や諸経費などもほとんど出ない。教員は労働基準法の適用外とされ、残業代は出ず、給料月額の4%が教職員調整額としてつくだけだ。
授業は高度化し、昔よりも生徒や父母ときめ細かに対応しなければならない中で、部活の負担は重くのしかかっている。
「部活の見直し」を考える中学教員の集まりでさえも「部活に出なければならない」ために出席できない教師が続出するなど、笑えない現実がある。

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私は学校の部活の取材をよくするが、学校側は部活に熱心で、文句を言わない先生を選んで取材させる。
「休みはあるんですか?」と聞くとほとんどが
「正月は2日から、それとテスト前の何日間だけです」と平気な顔で返す。
「ご家族大変ですね」というと
「理解がありますから」というのがお決まりのパターンだった。

しかし当然ながら、そんな教師だけではないのだ。また生徒の中にもいろいろな趣味を楽しみたい子供もたくさんいる。
そういう教師や生徒を「部活一色」に染め上げているのが今の学校教育だ。

このあたり、40代以上の人は今一つ理解できないかもしれない。我々が中高生だったころと今では、「部活」のありようは一気に変わっているのだ。

面白い本なので、是非一読してほしいが、重要なのは第9章「未来展望図」だ。
ここには、高校野球改革にも関連する重要なことが書かれてある。

・「居場所」と「競争」の役割分担

「部活」は本来、放課後の子供が集まって好きなことを楽しむための「居場所」だった。学校は安価な費用でそうした「楽しみ」を提供していた。ここに「競争」の原理が入り込み、「勝利至上主義」が根付いたことで部活は急激にブラック化した。
「部活」を本来の「居場所」にもどすために、「競争原理」の根源である「全国大会」などの大きなイベントを学校から排除する。

・「部活」の総量規制

「あの先生がやっているから」「あの学校はもっと頑張っているから」と「部活」はエスカレートしていく。例えば部活の日数を「週3日」までにするなど、部活時間の総量規制をしようというものだ。

・「学校」から「地域」の部活動へ

そう言う形でスリム化した「部活」を補完するために地域単位の民間クラブができればよい。「競争」がしたい生徒は民間クラブなどで、お金も時間もかけて打ち込むようにする。

そうすることで、学校の負担も軽減され、先生もまともな「生活」が戻ってくる。子供たちも「自由な時間」が生まれる。また学校の経済負担も軽減される。

高校野球でいえば、学校単位で出場を競う「甲子園」は廃止する。その代わりやりたい生徒だけの民間クラブの代表による全国大会を新たに設けるということだ。

「そんなことできるはずない」と思うかもしれないが、そうすべき時が来ている。

この本は、野球関係の人にもぜひ、読んでほしいと思う。

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ルーキー最多安打レース

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