昨日、徳島、蔵本球場で予定された独立リーグのグランドチャンピオンシップは雨天で中止、順延となった。しかし、甲子園ではCSファースト・ステージが行われた。本降りの雨の中で、ちょっと見たことがない光景が繰り広げられた。
午後2時開始のはずが、降雨のため1時間も開始が遅れた。
降りしきる雨の中で、両軍ともに小刻みな継投をしたから、試合時間は余計に伸びた。7回には今年、無敵のセットアッパーだったはずの桑原謙太郎が、1死を取ったものの1本塁打を含む7安打を浴びて6点を失った。
ボールは水たまりで勢いを殺がれ、しばしば野手の前で止まった。筒香は打席で足を取られて転倒し、泥だらけになった。
試合はだらだらと続き、5時を回ると照明に灯がともった。

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桑原の後は、ベテランの藤川球児が上がったが、彼の背後には、池かと見まごうような水たまりができ、風でさざ波が起こっていた。
8回二死から、ゴメスこと後藤が代打に出てくる。後藤は同級生の藤川のホップする速球を思い切って空振りした。藤川の口元に笑みが浮かんだ。ほほえましい風景ではあったが、試合はそれどころではなかった。
46,761人の入場者の大半が帰り、観客席もまばらになる中で、4時間35分に及ぶ試合が終わった。午後7時半を回っていた。2時に入場したお客は、5時間半も甲子園にいたことになる。

ここまで無理をして試合を強行したのは、中止による混乱を回避するためだった。
先日も述べたが、CSファーストステージは予備日を1日しかとっていない。順延はない。3戦2勝先勝のシリーズだが、2試合しかできなければ1勝1敗で2位チームが勝ち抜け、1試合なら勝った方が勝ち抜け、全試合中止なら2位チームが自動的に勝ちぬけになる。
戦わずして勝ち抜けが決まることへの批判が起こるのを恐れたリーグ側が、試合を強行したのだ。

試合後、杵渕和秀セ・リーグ統括はこう説明した。
「クライマックスという試合の性質も考えまして、判断させていただきました。大変なコンディションでしたけど、できるだけ試合を行うというのが基本だと思いますので。
また、試合をやったからには審判の方は九回を目指すというのが基本ですので。中止で次のステージに進出するとか、普段とはまた違う要素もありましたので、とにかく試合を行うということを一番に考えて判断しました」


今後はダブルヘッダーも想定すべきだと思うが。

金本監督は日刊スポーツによれば
「いつ試合が終わるか分からない状態だったので、先発を早めに代えたり、継投が非常に難しかった。色々なことを考えないといけない試合だった」
「通常ならば中止になるような状況の中で選手が気の毒で申し訳ないという思いだった」
と言った。

ラミレス監督は毎日新聞によれば
「たくさんヒットを打ったが、この状況だからのヒットが多かった。けがも起こりうる状況だった」
と言った。

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新聞の論調もおおむね「選手が気の毒」「もっとゆとりある日程を」
というものだが、私はちょっと考えが違う。

この試合はアマチュアの大会ではない。プロのトップリーグの雌雄を決する戦いだ。と、なればこれは戦(いくさ)である。戦(いくさ)には、天地の運がついてまわる。それもドラマだ。
投手の連投や登板過多などの酷使は避けなければならないが、雨天など悪条件で試合をするのは、選手の酷使とは言わない。それも野球だと思う。
制度に問題があるとは思うが、悪天での試合は想定内だろう。

F1のようなモータースポーツは、雨になると各チームのマシンの性能差が縮まり、勢力図が変わる。アイルトン・セナが最後に鈴鹿を走った1993年の日本グランプリは、雨中に行われたが、非力なフォードエンジンのマクラーレンに搭乗したセナが水をナイフのように切り裂いて、見事に優勝を飾った。1コーナーで見ていた私は感動した。本当に力のある選手は、悪天をも見方につけるのだ。

そういう意味では、降りしきる雨の中、同級生の後藤との力勝負を楽しんだ藤川球児は、さすが歴戦の選手だと思った。
プロであれば雨の日には、雨の日なりの戦い方を見せてほしい。

甲子園は、今日も雨が予想されているが、再び「雨天ならでは」のドラマが繰り広げられることを期待したい。


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