JリーグがNPBとの差別化を、ことさらに推進したことについて、私の解釈を補足しておきたい。

ありていに言えば、「言葉」は本質的な問題ではない。ピッチがグランドでも、サポーターがファンでも、チェアマンがコミッショナーでも、大きな支障はないのだ。

しかしJリーグが誕生した時点で、プロ野球は半世紀以上の歴史を積み重ねている。その言葉は、本来の意味から遠いものになり、先入観がまとわりついていた。

たとえばコミッショナー、野球協約ではコミッショナーはNPBの最高権力者であり、すべての決裁権を有しているはずだったが、1950年以来、NPBのコミッショナーは法曹界や官界などを退職した高齢者の名誉職と化しており、実質的な権限はなかった。
後の話になるが、2004年の球界再編の折には、当時の根来泰周コミッショナーは「コミッショナーには何の権限も決定権もない」と、言ってはならない「本当のこと」を言ってしまった。

Jリーグは「コミッショナー」という言葉についた「お飾り」というニュアンスを忌避したかったのではないか。

NPBで使われている言葉は、本来の意味を離れて、異なったニュアンスを持つ「変な手あかがついた言葉」になっていた。そしてその言葉のニュアンスは多くの日本人に周知されている。

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Jリーグが「ドラフト」を導入しなかったのも、日本のドラフトが本来の目的である「選手獲得コストの軽減」と「戦力均衡」からかなり外れた異質なものになっていたことが一因だろう。

Jリーグ各クラブは下部組織を持っている。そこでの選手の育成が前提ではあるが、だからといってドラフト制度がそれにそぐわないとは言い切れない。MLBの各球団も巨大な下部組織で選手を育成しているが、同時にドラフトも実施している。
またクローズドリーグとオープンリーグの違いでドラフトの必要性を指摘する声もあるが、それも説得力に欠ける。
新人獲得に際して、ドラフトで指名するというのは、イベント性が高く注目を集めるので、プロスポーツとしては有意義だと思える。

しかし日本においてはドラフト制には、「球団の横車」「ブローカーの暗躍」「裏金」「逆指名」などのネガティブな印象がまとわりついている。しかもJリーグ発足にの顔ぶれには、讀賣などNPBにも関与する企業があった。「ドラフト」と聞いた途端に、プロ野球と同じ手法で手を回す可能性は大いにあった。

日本での定義としてのドラフトは、選手獲得コストの削減にはつながらない。また戦力均衡も不十分だった。
始まったばかりのJリーグが、経済格差が戦力格差に直結するようでは、将来展望が開けない。
そういう意識もあって、ドラフト制度は導入されなかったのではないか。

それが二十数年してJリーグの「文化」になった。

昨年発足したバスケットボールのBリーグは傘下に育成組織を持たないが、それでもドラフトを導入しなかった。Bリーグの運営には、川淵三郎氏をはじめJリーグの関係者が関与しているが、Jリーグの経験を経て、ドラフトは不要と判断したのだと思う。


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