21世紀の初頭、日本球界の視野はずいぶん広く、遠くに開けていたはずだ。野茂英雄が開拓したMLBの世界は、イチローによって、野手も含めたすべての選手の可能性へと広がったからだ。

野茂英雄は、NPBでは傑出した投手だった。MLBに移籍してから、防御率は下がり、制球にも苦しんだが、奪三振は衰えず、一流の先発投手として活躍した。
そのあとに伊良部秀樹や長谷川滋利、吉井理人などの投手も渡米。彼らはNPBでは一流の投手だったが、野茂ほどではなかった。それでもMLBではそこそこ通用した。

これで日米の人は、NPBとMLBはある程度「レート換算」が可能ではないか、と思うようになった。日本の10勝投手は、アメリカでもそれなりに通用する、ということだ。

そしてイチローが渡米した。イチローは2001年、驚異的な活躍をし、首位打者、盗塁王、最多安打、新人王、MVPまで受賞した。衝撃的だった。
イチローも野茂と同様、NPBでは傑出した存在だった。イチローの成績もMLBでやや下落したが、イチローの活躍からすれば、野手も日米での「レート換算」ができるのではないか、と多くの人が思った。

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その意識は、松井秀喜の移籍くらいまでは続いたのではないか。松井はNPBではON以来の強打者で、日本人打者では最後の50本塁打者だった。MLBではパワーは大幅に落ちたが、それでも30本を打った。
NPBで中心打者は、MLBでもそこそこやるのではないか、そう思われたのだ。

しかしその後の野手は、ことごとく期待を裏切った。打撃もそうだったが、それ以上に守備や走塁などで残念な選手が続出した。城島健司のように日米の「捕手の機能」のギャップを克服できない選手もいた。
とりわけ内野手の守備力の弱さ、当りへの弱さが失望を大きくさせた。

そうなってくると、NPBから移籍する選手の年齢と年俸の高さがネックになってくる。

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こうしたギャップは主として日米の環境と野球観の違いによる。人工芝でイレギュラーが少ない球場になれた日本の内野手は硬くて粗いアメリカのフィールドで苦しんだ。正面でゴロを捕り、確実にアウトにすることを学んできた内野手は、アクロバティックなMLBの守備はできなかった。また、引っ張る打法をかたく戒められた日本の打者は、パワー全盛のMLBについていけなかった。

21世紀に入ってセイバーメトリクスがMLBに全面的に取り入れられ、野球そのものが情報化すると、MLBでは野球選手の評価軸も変化した。さらに、投手、打者、野手の全プレーがデータ化され、解析されると、野球選手に求められる資質も劇的に変化した。
これによってMLBの選手は今までの「打率」「本塁打」「打点」ではなく、WARに代表される新たな目標に向かって、プレーも肉体も改造するようになった。

しかし日本の野球は、昭和の時代とほとんど変わらず、旧態依然としたままだ。いまだにセイバーメトリクスさえ浸透していない。古い指導法が幅を利かせている。
そんな中でもポテンシャルが高い投手の評価は変わらないが、野手は、能力以前の、意識やトレーニングの次元で、MLBとは大きく立ち遅れた。

今ではMLBは、NPBを野手の市場とは見なしていない。むしろ韓国の方がマシだと思っている。

そういう現状で、NPBはMLBとの大きなギャップ、進化から取り残されている、という「見たくない現実」から目を背け、海外との比較をしなくなっている。

現在は、NPBの野手はMLBで必要とされていない。需要がない。しかしその現状を看過すると、日本野球の将来は暗い。
近い将来「野球離れ」によって日本の野球市場は、シュリンクするが、そのときに国際的な市場への展開が望めないのは非常に深刻だ。

NPBが今すべきことは、MLBで起こっていることから目を背けることではなく、それを見つめ、しっかり取捨選択すべきだ。
そして野手の人的交流を積極的に行って、新しい野球をNPBに取り入れるとともに、日本の野手の優秀さをMLBにアピールすることだ。

それができなければ、NPBは、MLBを中心とした野球地図における辺縁部に甘んじることになるだろう。

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