野球の話ではないが、日馬富士の貴ノ岩への暴力事件は、衝撃的だった。野球賭博事件から6年、大相撲はすっかり改心して真人間になっていたように思っていた世間に冷水を浴びせたことだろう。
まず、大相撲界に強固な「モンゴル社会」ができてしまっていること。大相撲では外国人力士は1部屋1人しか入れることができない。そのためにモンゴル人力士は多くの部屋に散らばって存在する。彼らは同郷で言葉が通じる誼で部屋を横断したコミュニティを作っている。このことは、致し方ないが、八百長や片八百長の温床になる可能性もある。モンゴル人も日本人同様、年功序列や入門序列を重視するから、強烈な上下関係ができる。
今回は、そういう「モンゴル人力士社会」の中で起こったことだ。
大相撲界の暴力沙汰は、同じ部屋や一門で起こる。部屋も一門も違う力士同士の暴力沙汰など、普通は考えられない。この事件は、大相撲界にべつの「社会」があることを知らしめた。相撲界をとっくにやめた朝青龍がいろいろ口出ししているのも「モンゴル人力士社会」の根の深さを感じさせる。

そして、相撲界の隠ぺい体質が再び明るみに出たこと。今回の事件は日間富士の師匠の伊勢ケ浜、貴ノ岩の師匠の貴乃花に、それほど時間をおかず伝わったと思うが、ここから事件が明るみに出るまでの経緯はいかにも不可解だ。
伊勢ケ浜、協会、貴乃花のいずれかのサイドが隠蔽をはかったのではないかと思われる。伊勢ケ浜、協会は単純に隠ぺい工作をした可能性があるが、協会反主流派の貴乃花は、これを「政治問題化」させる意図があったかもしれない。

いずれにせよ、この事件で、大相撲の世界は八百長事件以後、みそぎを済ませて「清く正しい相撲界になりました」というわけではないことを露呈したと言えよう。

対応を過てば、相撲界はまた暗黒に包まれる。ビール瓶で殴ったかどうかは関係なく、日馬富士が暴力をっ振るったのなら、引退、廃業措置は必須。それも速やかに行うべきだろう。
また「モンゴル力士会」にもメスを入れるべきだろう。

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この事件で私が注目したのは、NHKの対応だ。
前の八百長事件では、腰が重かった。他のマスコミもそうだが、メディアが相撲界で行われている怪しげな慣習を知っていながら看過した、という不作為による「共犯関係」にあったことが影響してか、報道は抑えめで、週刊誌の後追いに終始した。

これまでメディアは、親方と雀卓を囲んだり、飲みに行くなど相撲界と癒着と言われても仕方がない関係を持ってきた。そのことで報道の切っ先が鈍ることがしばしばあった。

しかし、今回はNHKが夜7時のニュースのトップで、この事件を詳細に紹介した。NHKは前回の事件を機に、大相撲における報道体制を見直したのではないか。身内同然のずるずるした関係を見直して、不正を糺す姿勢になったのではないかと思えた。

今の野球界とメディアの関係も不健全だ。野球賭博問題でも、フジサンケイだけが走って他のメディアは消極的だった。また高校野球では、朝日も毎日も不祥事に対する報道は腰が引けている。間違っても「高校野球の体質」に論が及ばないように、慎重に報道をしている。

今後もプロ野球、高校野球では不祥事が起こるだろう。そういうときにメディアがどんな報道をするか注視したい。
なれ合いメディアならば、いい加減な報道しかできないだろう。週刊誌の後塵を拝するだろう、野球界の問題に、今回の大相撲をめぐるNHKのような厳しい報道がなされるようになれば、野球界とメディアは、一歩健全化したと言えるだろう。


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