MVP、新人王、ベストナイン、ゴールドグラブ、この手の記者投票には、必ずおかしな票の動向がつきまとう。これは記者の心得違いによるものだ。
NPBのこうしたアワードへの投票権は、国民の義務としての「参政権」とは全く違う。
国政や地方選挙で「1票の権利」を有する有権者は、どんな泡まつ候補に入れようと、極悪人に入れようと、それを非難されるいわれはない。参政権は、有権者が自由に政治、政治家を選択する権利であり、一切の干渉から自由だ。

しかし新聞記者のNPBアワードへの投票は全く異なっている。5年以上プロ野球の現場で取材したメディアの記者=記者クラブ会員社の記者は、一言でいえば「有識者」である。
彼らは一般のファンよりも高い見識を有し、野球、野球界にたいする知識もあるから投票権を与えられる。そして彼らは野球界全体についての「有識者」であり、特定の球団や選手の利益の代弁者ではない。当然、公平性も担保されるべきだ。

しかし、毎年のこうした投票から見えるのは、アワードの投票をする資格があるかどうか疑わしい有権者が少なからずいるという事実だ。

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パのMVP投票で、オリックスの山岡に1位票を投じた記者に話を聞けば、どういう答えが返ってくるだろうか?
その記者が
「山岡は、今季パ・リーグで一番活躍した選手だから、1位票を投じた」と言えば、多くの人はその記者の見識を疑うだろう。
「オリックス番で、山岡はよくやっていると思ったから1位票を投じた」と言えば、まだ納得性は高いが、その記者の資質が疑われてしかるべきだろう。

政治の分野でもこういう例はよく見られる。与党番の記者が、政治家たちに食い込んで話を聞いているうちに、政治家と親しくなり、書くべきことを書かなくなるのはよくある話だ。その果てにその党から立候補することもある。
そういう記者は、本来向き合うべき読者、国民の側から、いつしか背を背けて、政治家の方に向き直ったということだろう。
一概に非難すべきと断言はできないが、新聞という言論機関に対する国民の負託に背いた、背信行為と見えなくもない。

政治記者は、政治家の理非を厳しくチェックし、問題があれば報道をする。国民の代表として権力者たる政治家を監視する責務を負う。
プロ野球の場合、そんな大それた使命はない。ファンの側に寄り添って、担当したチーム、選手の情報を発信すればよい。しかし、アワードの投票では、自軍の選手をえこひいきして投票することを求められてはいない。
そのときは、全野球ファンを代表して、公正な1票を入れるべきだ。そうでなければ、アワードの信頼性は揺らぐ。
みんなが納得するような結果にならなければ、賞の権威は失われるのだ。

東京、大阪の新聞社は昔から、巨人、阪神には複数の記者を置き、他の球団は一人で賄ってきた。
今回の新人王投票で、阪神の大山に票が集中したのは、阪神担当の記者が他球団担当の記者より多いことと関係があるだろう。

そういう行為がエスカレートすると、賞の権威は損なわれる。今のレコード大賞のようになる。有権者たる記者各位は、自分が手にしている責任の大きさを自覚すべきだろう。

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