中村鋭一が11月6日、ひっそりと世を去った。関西以外の人には何のことかわからないだろう。大阪、朝日放送の名物アナウンサーだ。

昭和40年代からラジオのパーソナリティとして活躍。
明朗快活な語り口で好評を博したが、何といっても「阪神ファン」の代表として人気があった。

民放とはいえ公共の電波で、特定の球団の大ファンであることを公言したアナウンサーは中村鋭一が初めてではないか。

野球中継は阪神一辺倒すぎて、好きに離れなかったが、基本的には気のええおっさんではあった。

阪神の球団歌「六甲おろし」には、いくつかの音盤がある。伸びやかな立川清登の音源も、プロの声楽家らしくすばらしいが、昭和の時代を代表するのは中村鋭一版だろう。すこし灰田勝彦風が入っただみ声は、あか抜けない阪神ファンにふさわしかった。

朝のABCラジオ番組「おはようパーソナリティ中村鋭一です」のパーソナリティとして「山よりでっかい獅子は出ん」など不思議な言葉を流行らせた。
のちにこの時間帯は同じ朝日放送のアナウンサーの道上洋三に引き継がれ、現在に至るが、内容的には中村鋭一の方が面白かった。

テレビでも「阪神ファン」を売り物にした番組を持っていた(今、タイトルが出てこない)。
「なにわのモーツアルト」ことキダ・タローとは、盟友関係にあった。キダタローは日本で一番洒落がきつい芸能人だと思うが、中村鋭一をいじらせたら天下一品だった。

佐野仙好が、川崎球場のフェンスにぶつかって頭がい骨骨折の大けがをした年のオフ、スタジオに川﨑球場のフェンス際のセットを作って、佐野を読んで実演をさせたが、キダは「ほんまにやってみなはれ」といって、中村鋭一をフェンスに叩きつけた。

またある年のシーズン前には、キダは中村鋭一に迫って「今年阪神が優勝しなければ、自殺する」と約束させている。もちろん、阪神は優勝せず、中村も自殺しなかったが、こういうきつい洒落をうけとめていた。

ちなみにキダタローは近鉄っファンだった。

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1985年の阪神優勝の時に、中村鋭一がうれし涙にくれたのは言うまでもない。

中村は、朝日放送を阪神タイガースべったりにしたきっかけにもなったと思う。

後に中村鋭一は、政治家になった。私が勤めていた流通会社に秘書と一緒にやって来て、社長に支援を頼んでいたのを覚えている。

政治家としては大したことはなかったと思う。確か阪神大震災の後で、「地震予知能力があるといわれるナマズをたくさん飼って、研究してはどうか」とあほな質問をしたのを覚えている。

気のいいおっちゃんという以上ではなかったと思うが、政治家としても人気はあった。確か西川きよしに負けて引退したと思う。どっちにしても、大したことではなかったが。

享年88歳。

同い年、学年一つ下のキダ・タローは健在である。

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