また野球以外の話だが、日本相撲協会の記者会見は、ざっくり言えば「言い訳」だった。いろいろあったが、大事にしないで事を済ませたいという協会側の気持ちがにじみ出ている。関係者に長時間事情聴取をしたそうだが、何とかして「お話し」を作りたかったのだろう。
言い訳は3つあった。

言い訳 その1 日馬富士と貴ノ岩は、非常に親しい間柄だった。

ともに親を早くに亡くしていた。日馬富士は貴ノ岩に何かと世話を焼き、その行く末に気をもんでいた。兄弟、親子のような関係だった。

だから、暴力も、可愛さ余ってのものであり「愛のムチ」のようなものだったといいたいのだろう。

言い訳 その2 例の会合は「モンゴル力士会」ではなかった

鳥取城北高校の同窓会の集まりであり、日本人力士もまじっていた。もちろん、同窓生以外の力士も交じっていたが、モンゴル人だけの集まりではなかった。

事件が、「モンゴル人力士会」の集まりの中で起こったと報じられているが、そうではなかったといいたいのだろう。

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言い訳 その3 日馬富士は、貴ノ岩が白鵬の話をちゃんと聞かなかったから怒った

モンゴル力士の頂点に立つ白鵬が、みんなに向かって話をしているのに、貴ノ岩が、それをしっかり聞かず、スマホをいじっていたから、日馬富士が腹を立てた。日馬富士は、貴ノ岩の兄貴分だ。仲間のトップに失礼な態度をとるのは許せない。だから殴った。

つまり日馬富士は、おのれの感情で怒ったのではなく、貴ノ岩が序列を軽視するような態度をとったので、管理責任のようなものを感じて殴った、と言っているのである。

そのうえで、日馬富士は引退した。
「どんな言い訳をしようと、暴力をふるったのは許されないですよね、だから、日馬富士は相撲をやめました。いろいろ日馬富士にも情状酌量すべきことがあるのは、今ご紹介した通りですが、それでも、やめました。だから、これで幕引きでいいしょう?」

と言っているのである。

マスメディアは、この暴力沙汰の背景に、相撲部屋を横断するモンゴル人力士の地下人脈があり、そこにはさまざまな疑惑が存在するのではないか、と疑っている。

また、貴乃花親方は、従来から八百長の疑惑をもたれないように弟子の出げいこを原則禁止するなど相撲界からは浮いた存在だった。そしてモンゴル力士会の集まりに貴ノ岩が出ることを禁止しようとしていた。

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反主流派の貴乃花親方のこの行動は、相撲界の疑惑の存在を間接的に物語っている。
貴乃花親方が相撲協会の聴取に応じず、また応じなかったことをメディアにはっきりと表明したのは、協会の「お話づくり」に利用されたくなかったからだ。
反対の立場を表明していたとしても、協会の聴取に応じれば、発表の際には丸め込まれて、「貴乃花親方も今回の発表に同意している」と言われかねない。

日本相撲協会の池坊保子評議委員長は、貴ノ岩の事故が起こった時に、警察に通報せず、貴乃花親方はなぜ第一に相撲協会に知らせなかったのか、巡業部長なのだから、と言ったが、知らせれば、警察への通報を止められる可能性もあったし、事件そのものをうやむやにされる可能性もあった。だから貴乃花親方はそうしなかった。巡業部長の職務を停止されるのは、当然、織り込み済みのことだっただろう。

相撲協会側からすれば、貴乃花親方は今回の事件を奇貨として、協会の問題点を暴露し、体制に揺すぶりをかけようとしているということになるだろう。

しかし貴乃花親方からすれば、相撲協会の実態は改善されておらず、様々な疑惑が渦巻いている。その背景に強くなりすぎたモンゴル人力士の存在がある。これを打破しなければ、相撲の将来は危うい、ということになろう。

テレビの識者が全く的外れなのは、相撲界に起こった異様なこの事件を、世間一般の企業の危機管理の論理で説明していることだ。企業のリスクヘッジでは組織内でおこった問題は、組織内で処理するのが原則だ。レポートラインに乗っ取って処理されるべきだ。

しかし、大相撲界で起こったこの事件は、一般企業で起こった事件よりもはるかに深刻で、コンプライアンス違反の可能性が大いにある。さらに、未解明ではあるが、その背景に大きな腐敗の温床が存在している可能性もある。

そのことに言及してこその識者だと思うが、彼らも他人事であり、及び腰である。

今のまま行けば、貴乃花親方が角界を追放されておしまいになると思われるが、批判勢力がいなくなった相撲界は、再び愚かしい集団に戻るのではないかと危惧する。



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