仙台育英高校の不祥事が、ひとしきり世間を騒がせている。野球部員の飲酒喫煙、まあ、どこにでもあるような、聞き飽きた類の不祥事だ。若いということは「馬鹿」の同義語だと思う。
日刊スポーツ

今夏の全国高校野球選手権大会で8強入りした仙台育英(宮城)は10日、部員の飲酒、喫煙が発覚した件で記者会見を開き、佐々木順一朗監督(58)が来年1月1日付で辞任すると発表した。系列の秀光中軟式野球部監督の須江航氏(34)が新監督に就任する。
佐々木監督は「管理体制の甘さだと思う。監督の脇の甘さがすべての原因じゃないかと思う」と苦渋の表情を浮かべた。


父母100人の前で語ったというが、佐々木監督「脇の甘さ」という言葉がすべてを物語っている。
この野球指導者は高校生が、法律に違反したことを問題視しているのではなく「子どもたちが、ばれないようにうまくごまかせなかったこと」「発覚したこと」を悔やんでいるのだ。

父母の多くも、未成年が飲酒喫煙したことを問題視するのではなく「ばれればこうなるのがなぜわからなかったのか」「なぜ、うまく隠蔽できなかったのか」を問題視しているはずだ。

先日、JRの在来線に乗っていたら、隣の高校生が制服のポケットからいろいろなものを出して並べ始めた。探し物をしているのだろう。スマホ、鍵の束、手帳などとともに、煙草のパッケージも出てきた。高校生は、それを何でもないようにまたポケットに収めた。

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私がその年代だった時代から、大半の男子高校生は、喫煙をしていた。喫煙習慣は、中学か高校時代に身につくものなのだ。その頃、たいていの家では父親が喫煙者だった。そういう親の中には喫煙がばれても叱らない人もたくさんいた。
そして、飲酒も、正月など親戚の寄り合いで、10台の頃から少しずつ覚えるものだった。

私は「人がやっているからという理由で何かをする」のが非常に嫌いな性分だったので、喫煙はしなかった。飲酒は友人とともに1、2度ビールを飲んだことがある程度だ。

しかしその頃から、今に至るまで、未成年の飲酒、喫煙は「違法」ではあるが、多くの大人は容認してきた。

コンプライアンスが厳しい社会になっても、その風潮は収まっていない。おそらく、全国の高校生のかなりの部分は、飲酒、喫煙しているはずだ。

そして先輩、後輩の上下関係が厳しい野球部では、先輩が後輩を共犯関係にするために巻き込むから、飲酒、喫煙習慣はさらに浸透しやすい。

仙台育英のケースは、生徒の一人が泥酔したことで発覚したようだが、そうでなければ何事もなく収まったはずだ。

多くの高校の野球部は仙台育英の一件を「他山の石」と見て、厳しく管理するだろうが、その基本姿勢は「我慢しろ」「ばれないようにしろ」というものだろう。
「違法行為だから、絶対にするな」という指導をする指導者はほとんどいないのではないか。

なぜなら指導者の多くは、喫煙者であり、野球指導の折にも煙草をくゆらせているからだ。高校の指導者にインタビューに行くと、指導者が部室に向かって「おーい、灰皿!」と呼ぶのをしょっちゅう見かける。すると部員が、灰まみれの灰皿を持ってくるのだ。

私は最近、NPBの球場の記者室やバックヤードに入ることもあるが、両軍ベンチの奥には必ず喫煙スペースがある。ここで選手や記者は、試合の合間も喫煙する。記者にとっては、格好の取材の機会ではあるが。

ようするに、野球界は煙草まみれであり、喫煙や飲酒のマナーについても極めて低レベルの意識しかないのだ。

喫煙は違法だどうだという話ではなく、どんどんと社会で規制が進んでいる。飲酒は禁止されてはいないが、マナー違反を大目に見る(「まあ、酒の上のことだから」)習慣はなくなりつつある。

つい先日も日本人乗客が台湾の飛行機で飲酒、喫煙をして騒ぎを起こしたが、そういう習慣について、社会は不寛容になっているのだ。

佐々木監督はほとぼりが冷めたらまた復帰するのだろうが「わきが甘い」などと言っているようでは、何度もこういう目にあうだろう。
「違法行為は許さない」「喫煙は禁止する」という、一般社会なみの規範意識を持たないと、野球はますます世間に取り残されるだろう。

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