「野球崩壊」という本を出したのは2016年10月だった。この本は、それほど売れず、版元に迷惑をおかけした。しかし反響はかつてないものだった。

今年に入って、NPBの幹部や球団関係者、多くの野球人にであったが、驚くべきことにほとんどの人が「『野球崩壊』、読みましたよ」と言った。タイトルのインパクトもあったのだろうが、問題意識を持っている人がたくさんいることが分かった。

毎年1冊は本を書こうと思っていたが、今年は「野球崩壊」のテーマをさらに深く掘り下げようと思った。そのために取材をしなければならない。ブログに発表しても取材費は出ない。その原資にすることも考えて「Full-Count」「Number Web」「東洋経済ON LINE」などで書かせていただくことにした。
それによって、さらに世界が広がったのも収穫ではあった。

春先から西武ライオンズやNPB、野球選手OB、地方の少年野球などが主宰する小学校低学年以下の幼児を対象にした「野球教室」を取材した。

柔らかなボールを使い、ボール投げる、受ける、打つなどの基本的な動作をわかりやすく教える。競技というより「遊び方」を教えるものだ。

私は街から子どもたちの「野球遊び」「野球ごっこ」が消えたことを憂慮していた。
いくらプロ野球にファンがついても、甲子園に人気があっても、それを見て、お金を払うファンがいなくなっては、野球界は成り立たない。
野球界はすでに競技人口の増加には、対策を講じていたが、すそ野に当たる「野球ファン」の醸成は、ずっと手付かずだった。

ここ数年、ようやく「野球遊び」の普及が本格化したのだ。
いくつもの現場を見て、実感したのは「野球」の面白さは、今も変わらないということだ。
ボールをバットで打って、走る。ボールを取って走者をアウトにする。
明治人が「打球おにごっこ」と言った野球の根源的な魅力、楽しさは今の子供にも十分伝わっていた。
「野球教室」が後半になると、子どもたちは先を争ってボールを取りに行き、バットに手を伸ばした。子どもたちは、教えてもらう前に、次の競技を感覚的に理解し「やってみたい」と思うようになるのだ。

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この感覚的な「面白さ」こそが、野球の本質だろう。そして「面白過ぎる」ことで、子どもたちは夢中になりすぎ、大人たちは眉を顰めた。
野球が日本にやってきて以来、何度「野球排斥論」「野球禁止論」が巻き起こったことか。公園での「野球禁止」も含め、大人たちは懸命に子どもから野球を引きはがそうとした。

他にここまで排斥論が巻き起こったスポーツはなかったのではないか。

その結果が、今の「野球離れ」だ。
一度定着した「野球離れ」のハリを元に戻すのは厳しいが、「野球遊び」に夢中になる子供を目の当たりにすると「希望は無くはない」と心強く思った。

来年も「野球遊び」をつぶさに見ていこうと思う。

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2016・17年R.バンデンハーク、全登板成績【ハムや金鷲は嫌だけど、初の2ケタ勝利&規定投球回到達】


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