こうして「野球離れ」について取材をしたり、書いたりしていると「カベ」の存在を意識せずにはおられない。

アマチュア野球の現場で、危機感を持っていない人はほとんどいない。
小中学校の現場では、野球をする子供が激減している。そもそも、小さいころから野球に慣れ親しむ子供がほとんどいなくなったから、野球を知らない。
そして、親の世代でも野球を知らない人が出始めた。また、野球に対して悪いイメージを抱く親も増えた。
さらに、サッカーが20年前から幼児への普及活動を始めた。サッカーは野球を反面教師にして指導方針などを組み立てたこともあり、幼児に急速に広がった。さらに、他のスポーツの選択肢も広がった。

「何とかしなければならない」と思う野球指導者が、全国に出て、様々な取り組みを始めている。医療関係者の中にも、野球をする子どもの健康面を第一に考えるべきだと唱える人が増えた。
「球数制限」の問題も、広範なアンケートによって一定のデータが出てきている。

しかし、アマチュア球界の上層部にいる人たちは、そういう野球の改革に大して否定的だ。「球数制限」についてアンケート結果を突きつけられても、データの信ぴょう性に文句をつけていっかな改革の一歩を踏み出そうとはしない。

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指導者、研究者に話を聞くと、必ず「高野連」の名前が出てくる。この存在が「野球離れ」対策を推進するうえで、大きなカベになっている。
彼らは「甲子園の伝統」をタテに、組織防衛をはかっている。彼ら自身がよって立つ地盤が揺らいでいることに、思いが至らない。

プロ野球でも現場の人々は、「野球離れ」に危機感を抱いている。現役の選手、指導者、球団職員に至るまで、懸念の声が広がっている。

しかし経営陣には、その危機感はないようだ。今年知り合った中島大輔さんの記事によれば、今年後半のプロ野球実行委員会の席上、少年野球の人口急減の議題が出たが、ある幹部は「そんなことは、大した問題じゃない」と一笑に付したという。

プロ野球でもこの調子なのだ。

結局、自ら改革できる組織と、そうでない組織は「トップの資質」が違うのだ。サッカー界などでは、トップが現場に先駆けて危機感を抱き、対応をしようとする。
しかし、野球界ではトップが現状を把握せず、組織防衛にのみ走る。

経営者とは「5年後の会社を見据えること」と「会社で一番早く危機に気がつき、対応すること」が仕事だと言われるが、野球界の"経営者"たちは、どうなのだろうか?

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2016・17年R.バンデンハーク、全登板成績【ハムや金鷲は嫌だけど、初の2ケタ勝利&規定投球回到達】


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