こうして野球界の現状をつぶさに見て、しみじみ思うのは「みんな、仲が良くないなあ」ということだ。

昔、落語家の世界にいたときも、名だたる師匠たちが、みんな本当に仲が悪いのに驚いた。表面的には仲良く付き合っているが、絶対に相いれない部分を持っていて、なかなか同調しなかった。

結局、一芸に秀で、大物と言われるまでになると、上下関係が強くなって、横の関係が弱くなるのだろう。その背景には、落語も野球も、師弟関係を重んじ、先輩後輩の序列が厳しく、規律を重んじる文化があるのだろう。

タテの関係で上昇すると、必然的に「お山の大将」になる。そして、他の「大将」と相いれなくなる。同じ方向で物事を考えていても、手を携えるということができない。

野球界の場合、プロにもアマチュアにも、そういう大小の「お山」がたくさん並んでいる。
それだけでなく、プロ球界とアマ球界も別々の山になっている。
さらに、セ・パ両リーグも。今は、NPBにはリーグごとの組織はないが、今でも両リーグは別々にペナントレースの日程を組み、歩調を合わせる気はさらさらない。

さらに12球団もみんなバラバラだ。同じように危機感を抱いていても、連携することはまずない。情報共有もほとんどしない。親会社が別の業界で、企業文化も違う。親会社からやってきた幹部社員は、他球団と連帯意識は持っていない。
「野球離れ」に関する取り組みも、各球団で始まっているが、担当者は「うちはうちでやれることをやるだけ。他球団のやることには口は出さない」という。またフランチャイズエリアを出て活動をすることはない。
多くの球団は、自分たちが突出して行動を起こしていると思われたくない、という意識を持っている。目立つことで、他球団のやっかみを買うことを恐れている。みんなが横並びで、とっぴなことをせず、おとなしくしている。

野球の普及活動をする有名な野球人も「自分にできることをする」という。言外に「それ以上のことはやりません」と言っている。

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野球界はそういう意味では、総すくみの状態にある。みんなが出し抜くこと、出し抜かれることを恐れ、語り合うことも、手を携えることもせず、常に、別の「山」を不信と疑惑の眼差しで眺めている。
長い間の確執が、個々の「山」に埋めがたい溝を作っている。古くて高い権威、権力を有する組織、団体ほど、その溝は深い。

「野球離れ」によって、野球界は、近い将来、確実に激しい変化に見舞われ、危機的状況に直面する。
率直に言って、そのときが到来するまでに、野球界が恩讐を越えて一つにまとまり、大事に対応するとは考えにくい。

しかし、その時が来た時に、現場レベルを中心に、野球再生に向けた地道な活動が、山火事の足下で枝をもたげる下生えのように、ささやかでも始まればよいと思う。
そういう明るい兆しも、少し感じることができたのが、今年の収穫ではあった。

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2016・17年R.バンデンハーク、全登板成績【ハムや金鷲は嫌だけど、初の2ケタ勝利&規定投球回到達】


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