金本知憲は、現役時代から大物野球人の間で、極めて受けが良かった。広島の古参記者は「考え方が衣笠祥雄とそっくりだ」と言った。まだ連続出場記録が大事になっていない段階の話だ。これは極めて示唆に富む。

金本については、金田正一、広岡達朗、野村克也、張本勲らも高く評価している。
彼らが金本を評価するのは「よく練習をする」という点だ。文句も言わずに一心に練習をする。体を鍛える。そして、めったに試合を休まない。

いわば、金本は「遅れてきた昭和の野球人」であり、その後の様々な野球の変化には、あまり肯定的ではなかった。

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昭和の野球界の大御所は、平成に入ってMLBから多くの知識や技術が流入し、練習法や作戦、戦術、選手の起用法が変化していることが気に入らなかった。「おいていかれている」という意識もあったし、「自分たちが営々と築き上げてきたものを否定された」ようにも思っただろう。

金本はそんな中では珍しい「昭和の香り」を残した野球人であり、だから大先輩たちに気に入られているのだと思う。
金本知憲は広陵高校から東北福祉大という上下関係の厳しい組織の中で育ってもいる。先輩に対する礼節も十分にわきまえている。その部分も受けがよいのだと思う。

藤浪晋太郎については、数字を見る限り、明らかに登板過多の影響が出ている。2015年はリーグ最多の3374球を投げた。2016年は2位の2948球。2016年に数字が下がったのは、球数を押さえたのではなく、ローテーションが維持できなくなったのだ。

今の野球では、こういう状況になればまずは「ノースロー」調整をするとともに、ひじ、肩の精密検査をして、必要があれば手術など医療措置を取るのが一般的だ。

しかし古い野球人たちは「精神がなってない」「指導者の言うことをきかない」「走り込みが足りない」など、自分たちの個人的経験でしかないことを声高に言い募っている。何の根拠もないという点では、池口慧観の「うちで治してやる」も同様だ。

金本知憲も、難しそうな今の野球の技術論よりも、そちらの方が耳に心地よいのだろう。その結果として、藤浪には「昭和の時代」の解決策を強いようとしている。

おそらく藤浪は、金本流のやり方に不信感がある。ダルビッシュと自主トレをすることになったのは、ダルが声をかけたのか、藤浪からなのかはわからないが、「精神論」「おまじない」めいたものではなく、もう少し科学的な裏付けがある対策をしたいと思ったからなのだろう。
同い年の大谷翔平が、ダルの下で練習をしていることも刺激になったのではないか。あるいは、大谷が奨めた可能性もあるだろう。

阪神というチームが、そもそも「投手は使い捨て」と思っている節がある。そんな中で藤浪晋太郎は、自己防衛のためにもダルビッシュ有のもとで学ぼうとしているのだろう。



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