キャンプを回る最大の楽しみは、選手が野球をするのを間近に見ることができることだ。もちろん、有名選手が躍動するのを見るのも好きだが、私はそうでなくても、「野球の動き」が目の前で繰り広げられるだけである程度満足する。

朝、選手たちがウォームアップをしている時間に、メイングランドではラインが引かれ、土がならされて、ダイヤモンドが整備される。

そして捕手の装備をした人たちがキャッチボールを始める。彼らは選手ではない、打撃捕手だったり、練習の支援スタッフだったりする。多くは元プロ選手で、引退後、球団にスタッフとして残ったのだ。

彼らのキャッチボールを見ているといろんなことがわかる。きれいな球筋で糸を引くような球を投げる人、幾分シュート回転する球を投げる人。引退しても選手時代の資質の差はそういうところからうかがえる。

そして大きく違うのが、打球を受けた時のミットの音だ。「バチーン」と景気の良い音を立てるスタッフがいる一方で、「ボスッ」と地味な音でキャッチする人もいる。
この差は何なのだろう。ミットの差か、送球の威力の差か、と思うが、恐らくそうではない。

「いい音を立てて捕ろう」と思う人と、そうは思わない人の差なのだ。

ブルペンでの投球練習、受ける捕手は、正選手のこともあるが、数が足りないのでブルペン捕手がもっぱらこれを務める。
ブルペンでは、すべての捕手がミットを思い切り鳴らす。速球だけでなく、スライダーやカーブでも、できるだけいい音をさせようとする。ブルペンは屋根があって音がこもるから、ものすごい音が響く。
私はこれを見るだけで、心が躍る。何か大変なものを見ているように高揚感を覚える。

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「いい音をさせてボールを捕球する」ことにこだわるのは、日本独特の文化だ。MLBのブルペンでは、そんな派手な音はしない。
いい音をさせるためには、ミットをボールにうまくぶつけて、ウェブの根元の一定のポイントでボールを受ける必要があるが、そのためには指の付け根や手首に負担がかかる。
それを避けてMLBの捕手はボールをミットの先でつまみに行くことが多い。またミットを軽く引いて、衝撃を分散させることも多い。
だから100マイル超の剛速球も「スパン」みたいな音しかしない。

これは文化の差であり、どちらがいいというものではないが、私は日本のスタイルが好きだ。

いい音をさせる捕手は野球が好きそうに見えるし、元気そうに見える。
「捕りゃいいんだろ」ではなくて「しっかり捕ろう」としている。こういう文化は残していってほしいものだ。


野村克也、投手別本塁打数|本塁打大全


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