契約形態は別にして、日本人はもうテレビを一生懸命見ることはなくなったのだろう。


ワイドショーなどは、ながら視聴であり、何も考えずにぼんやりと見ているだけになった。
そして短時間ですぐに笑える、感動できる予定調和的な番組ばかりになったために、スポーツ中継のように、長時間の集中力が必要なコンテンツは、今の視聴者には耐えられないものになった。視聴者は甘やかされて、咀嚼力、消化能力が落ちたともいえるだろう。

スタイルを変えないことがモットーであるはずの古典芸能でさえ、ここ30年ほどの間に上演時間が短くなった。「今のお客には我慢できなくないので」ということだった。

今の一般の視聴者が「退屈な部分」を我慢して、最後まで視聴するのは、ワールドカップやWBCなどの国際試合の日本代表戦、オリンピックなどの「特別のスポーツ」だけになった。そういうゲームは「歴史を見ている」という高揚感もあって、我慢して見る。
しかし、サッカーや野球のリーグ戦、レギュラーシーズンなど日常的に開催されていて、勝ったり負けたりしている試合を、毎日律儀に見る視聴者は、本当に少なくなった。
かつて、サラリーマンの夜の定番と言えば「家でビール、ナイター観戦」だったが、この習慣はほぼ絶滅した。このために、地上波の野球中継も絶滅したのだ。

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特別のスポーツしか見ない普通の視聴者、特別の視聴者しか見ない普通のスポーツ

サッカーも野球も、今は「コアなスポーツファン」のために番組を放映している。金を払ってでも中継を見たいと思うような、熱心なファンのために、試合や選手の情報を伝えている。
マニアックな情報もふんだんに取り入れて、ファンの知的欲求を満たそうとしている。

今、宮崎と沖縄のキャンプを回っている最中だが、どこへ行ってもその球団の地元のファンがやってきていた。もちろんキャンプ地の地付きのファンも少なくはないが、九州、広島、関東、関西、北海道から熱心なファンが連日駆けつけている。

こういうファンが、DAZNなどの主たる視聴者になっていくのだろう。

気になるのは、スポーツ紙や一般紙、地上波テレビ局などの既存メディアだ。どのキャンプ地でも取材パスとメディアパスをぶら下げて、大手を振って取材しているが、その取材対象は、一部のスター選手、監督くらいであり、コアなファンが注目する若手選手や個性的な選手の取材は相対的に小さい。
そして昭和の時代、お茶の間に届けていたようなありきたりの情報を、毎日熱心に発信している。
誰それがブルペンで何球投げた、とか、紅白戦でだれがヒットを打ったとか、どうでもいい情報を熱心に発信しているのだ。

地上波テレビなどはたかだか5分のニュースのスポーツコーナーのために記者やスタッフを派遣しているが、何を伝えているのだろうと思う。

コアなファンが喜ぶような情報は、球団広報などが取材をして発信することも多い。
彼らの方が、ファンが何を望んでいるのかを知っているからだ。

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いつになったら、そのかい離に気が付くのかとも思うが、こうした記者クラブ系がキャンプにやってこなくなったら、プロ野球の落ち目ムードはあからさまになるのだろう。

そういう意味でも、プロ野球の取材現場にも新しいトレンドがもっと出て来るべきではないかと思う。


野村克也、投手別本塁打数|本塁打大全


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