センバツの準決勝で不甲斐ない試合をした智辯和歌山、高嶋仁監督の言動がメディアをにぎわした。明らかにこの指導者には問題があるが、メディアは、必死にそれを打ち消した。

準決勝での不甲斐ない戦いに、高嶋監督が癇癪玉を落とした。

4月3日 スポニチ

三塁側ベンチの高嶋監督が烈火のごとく怒ったのが、5回裏の守りを終えた直後だ。捕手の東妻純平(2年)に向かい「何をやっとるんや!? これで負けたら、帰って“シゴキ”や!!」と猛練習を予告。周囲も凍り付くド迫力だった。
中略
高嶋監督のお立ち台は「負け試合ですわ…」の言葉で始まった。5回裏の激怒については「1球で試合の流れは変わる。もっと1球1球を大事にしないか、ということ。詳しいこと? 聞かんで下さい。問題になる」と苦笑い。


この人物は、2005年にアメリカの映画人が作った「Kokoyakyu」 という映画の主人公の一人である。
猛練習と強烈なリーダーシップで、智辯和歌山を毎年のように甲子園に出場させている。その根幹にあるのは強烈な勝利至上主義であり、そのためなら何でもするという指導者だ。
この映画では野球部の生徒が「怒られてもどつかれてもついていく」と言っている。暴力さえもいとわない指導をしていたのだ。

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今は表立っては牛や馬のように叩いたり蹴ったりして生徒を仕込むのは認められていない。厳しい指導は否定されているが、古い指導者はそれに不満がある。「詳しいこと? 聞かんで下さい。問題になる」のことばにそれが表れている。
先日紹介した帝京、前田三夫監督もそうだが、高校野球で名を成した「名将」と言われる監督たちは、今風の指導を納得して受け入れているわけではない。
「時代だから仕方がない」とは思っているが、問題があるのは自分たちではなく「軟弱な子供たちと、子どもを甘やかす世間が悪い」と思っている。一皮むけば、昭和の野球を変える気は毛頭ないのだ。

「シゴキ」という言葉を口にするような監督は、退場させるべきだ。メディアはその言葉を拾いながら、名将に忖度して大事にしないように丸め込んだ。

新聞メディアは「生徒の自主性を尊重した指導」「プレイヤーズファースト」を口にする。そういう事例を紹介し、あたかも「自分たちも改革の側に立っている」かのように思わせながら、昔の名将には何の反論もできない。「シゴキ」発言は明らかに問題だったが、後追い記事は一切出さなかった。へたれである。

私は、「Kokoyakyu」に出てきた智辯和歌山の生徒たちの「その後」を追いかけたが、プロ入りした選手は早々に引退し、後のメンバーも野球を辞めている。彼らは高校野球が人生のピークになってしまっている。
こういう指導が、本当に子どものためになるのか、一度真剣に考える必要があるだろう。

「一将功なりて万骨枯る」、指導者と学校だけに脚光が当たるような今の高校野球は、明らかに歪んでいる。

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