このところ問題意識を共有する人に取材することが多かったので、当サイト読者各位もそのようであるかのように思っていた。もちろん「野球離れ」や「教育としての野球」を知らない、関心のない人もたくさんいるわけだ。少し補足をしておく。

MLBでは近年、情報化が高度に進んでいる。配球については投手ごとにデータがとられ、打者ごとの傾向が分析されている。各打者は事前に詳細なデータを受け取る。大谷もそのようにしているシーンが見られた。また、サインについても細かく分析される。走者が捕手の配球やコースを見破って打者に教えるような牧歌的なものではなく、はるかにシステマティックなものだ。日本人投手がやすやすと本塁打を打たれるのは、おそらくそのせいだ。大谷が今、好投を続けているのは「データが少ない」ことも大きいと思う。
むしろNPBの方がオーガニックな「投打の対決」が多いかもしれない。サイン盗みは禁止されている。もちろん、それでも情報戦は続いているが。

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しかしアメリカでは、育成レベルでそうした「オトナの野球」を教えることはない。アメリカの野球少年は、高校生のレベルからMLB傘下出身のコーチの指導を受けることが多い。ドミニカ共和国など周辺ではMLBアカデミーで野球を学ぶ。そういうレベルの指導者は、サイン盗みや盗塁サポートの空振りなど姑息な野球を教えたりしない。またバントバントで加点するような野球も教えない。
なぜなら、そうした戦術は「目先の勝利」のために行うものだからだ。
高校やアカデミーのコーチに求められているのは、選手を上のレベルで通用する選手へと育てることであり、自分たちのチームの勝利ではない。
姑息なサイン盗みをしたり、せせこましい戦術を駆使したりして、また少数の投手を酷使して大会で勝ったとしても、称えられることはない。それによって選手に健康被害が出たり、選手が実力を発揮できなければ、その指導者の評価は下がる。

しかし日本の少年野球では、小学生の頃から子ども達はベンチのサインを見て野球をしている。送りバント、盗塁などで細かく点を稼いでいる。また投手に連投を強いたりしている。強豪チームになればなるほどそうしている。小学生の間は、子供の成長度合いにはばらつきがある。盗塁を刺すことができる捕手などほとんどいないのに、しつこく走るチーム。子どもに打たせず、四球を選ぶチームがどんどん勝ち進むのだ。そしてそういう指導者が「名将」と呼ばれる。

「勝利至上主義」によって、日本の野球はせせこましく、将来展望が開けないものになっているのだ。
野球というのは基本的に、投げる、打つ、走るというアスリート的素養で競われるスポーツだ。そこに戦術、戦略を加えるのは重要なことではあるが、それが本来の「野球の実力」を捻じ曲げるようなことになれば、特に教育レベルでは少しも将来のためにならない。

堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表は、かつて子供たちを率いて国際試合に出て活躍した。そこでは日本流の細かい野球をして勝ち星を稼いだ。海外の指導者は「強いな」とは言ったが、「君の野球を教えてくれ」とはだれも言わなかった。そして日本の少年野球のやり方が、他の国に波及することはなかったという。

そういう前提で話をしていたわけだ。ご理解いただけただろうか?




チーム得点・どこまで伸びる西武ライオンズ



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