私がプロ野球ファンのコアの人たちが、Jのサポーターのようになることに、嫌悪に近い感情を覚えるのは、サポーターもファンも「ボランタリー」だからだ。

ファンもサポーターもそうだが、彼らは球団、クラブや選手に「無償の愛」を注いでいる。
お金を出して球場に足を運び、チケットを買い、グッズを求め、頼まれもしないのにフラッグやボードを自作して、大きな声を出し、体を動かして一生懸命チームや選手を応援する。

「応援団」は絶対に職業ではない。かつては応援団を取り仕切って金銭のやり取りをする連中もいて、その中には反社会勢力もいたが、今のファン、サポーターは金銭的な報酬なしに応援を続けている。ほとんど職業と言っても良いような熱心さで。

球団、クラブは彼らを優遇し、チケットの早期販売や特別のグッズの頒布、配布などを行っているが、当然のことながら彼らに日当を支払ったり、食事をふるまうなどの供応はしない。あくまで「お客さん」のままだ。

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今、エンタメ界もこういう熱烈なファン、サポーターを囲い込むことで成り立っている。CDが売れず、音楽でのテレビ出演も少ない中、ジャニーズやAKB48なども、こうしたファンクラブ会員がコンサートなどで莫大な金を落とすことで収益を得ている。それは、単なる「売買」のレベルをはるかに超えている。

昔も、好きな歌手のレコードやCDを買う客はいた。コンサートにチケットを買って見に行く人もいた。
しかし、今のファンクラブの会員は、単に歌手の楽曲を聞くためにライブやコンサートに行くのではなく、対象となるアイドルに「忠誠心」を示すために会場に足を運ぶ。人気者のコンサートのチケットはなかなか入手できないが、会員になってグッズを買い、熱心にコンサートに足を運ぶことで、チケットは入手しやすくなる。
主催者は、ファンクラブ会員により多くの金を使わせるために、さまざまなプロモーションを仕掛ける。例の総選挙などは犯罪的だと思うが、要するに「煽る」のである。ファンはその煽りに乗って、財布をカラにし、仕事も生活も忘れてアイドルに入れ込むのだ。

これに近い関係が、プロ野球でも、サッカーでも見られる。球団やクラブはさまざまなプロモーションやイベントを仕掛けて、ファン、サポーターに金を使わせようとしている。

私はこういう関係が健全なものとは到底思えない。私は小さいころから野球観戦をしてきたが、親もそうだったので球団や選手のグッズを一度も買ったことがない。南海ファンだったが、毎年買うのはファンブック1冊だけだった。試合は熱心に見たが、それだけで十分に満足だった。

敢えて言うが、野球でもサッカーでも、仕事や生活を放り出してまで見るようなものではない。生きていくうえで必要な時間の合間、「ついでの時間」を活用してみるものである。だからパスタイム(ひまつぶし)なのだ。重要な試合になれば、仕事を早く切り上げて見に行くかもしれないが、そんな試合は年に何試合もないはずだ。しかしファンやサポーターは、程度の差こそあれ、野球、サッカー観戦を、生活の最優先事項にしているのだ。

Jリーグが観客を「サポーター」と呼び、形式的とはいえ、クラブの運営方針まで相談を持ち掛けるのは、どうかと思う。お金を払って見てくださるお客様に、経営責任の一端を担わせるのは、明らかにやりすぎだろう。Jのクラブはそういう姿勢を示すことで、サポーターを「身内」にし、そのロイヤリティを強固なものにしようとしている。
多くのサポーターはクラブが弱くなっても、選手がいなくなっても、一生懸命そのクラブを応援する。それは自分たちが単なる「お客さん」ではなく「支援者」だという自覚があるからだろう。

しかし、それが「ファン」「サポーター」の正しい姿、スポーツ観戦の「王道」とは、とても思えない。強ければ、魅力があれば熱心に応援し、そうでなければ見離すのがファンではないのか、そういう思いもわいてくるのだ。

「ボランタリー(自発的な)なファン、サポーター」が、いつの間にか絶対的なロイヤリティを強要されることに、嫌悪感を覚えるのだ。

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そういえばチーム得点ってどうなりましたかね?|51試合終了時点



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