私はゴルフはやらないが、バブル以前から何度も仕事でかかわったことがある。このスポーツは他とはかなり異質だ。

ゴルフの発祥には諸説あるが、イギリスで上流階級の遊びとして完成された。日本では20世紀になってから外国人が自分たちで遊ぶためにゴルフコースを開拓し、そこから始まった。戦前、戦後を通じて、とびきり贅沢な遊びであり、庶民とは縁がなかった。

私は若いころ、ある仕事で、最晩年の戸田藤一郎に話を聞いたことがある。プロゴルファーの草分けの一人だが、率直に言ってスポーツマンというより、職人という印象だった。
草創期の日本のプロゴルファーは、ゴルフ場に所属し、試合に出場していたが、主たる仕事はそのゴルフ場の上得意とラウンドし、ゴルフを教えることだった。戸田藤一郎には住友銀行系の経営者がお旦としてついていた。昭和中期までのプロゴルファーは下僕のように旦那に扈従していたのだ。

レッスンプロは今も似たような境遇にいるが、競技に出るエリートプロゴルファーは、今や純然たるアスリートだ。自分の力で賞金を稼ぎ、富を築いている。彼らの多くは大卒でもあり、プロスポーツ選手としての矜持がある。昔のプロ選手のように幇間みたいに大企業の経営者にぺこぺこできるか、という気持ちもあろう。

片山晋呉が、「日本ツアー選手権森ビル杯」前のプロアマ戦で、森ビル関係の招待客に失礼なふるまいをした背景には、おそらくそうした意識があったと思われる。

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しかしながら、プロゴルフの収益構造を考えるなら、今もスポンサーは一番に優遇されるべきだということがわかる。
プロゴルフトーナメントは有料のイベントであり、入場料収入がある。また有名な大会はテレビで中継されるから放映権料も入る。
しかし、入場料収入、放映権収入ともにプロ野球やJリーグとは比較にならないほどの少額であり、プロゴルフ界の運営は、今もスポンサー収入に依拠している。特にメインスポンサーたる大企業は、今も大旦那なのだ。
森ビル関係者を無視してパットの練習を続けたり、口応えをした片山晋呉は大人の事情を理解しない「スポーツ馬鹿」だと言っても良いだろう。たまたま片山が日大出身だけあって、また「日大は」ということになっているが、それは関係ないだろう。

それに比べればプロ野球界は、という話ではあるが、実はプロ野球界にとってもスポンサーはなくてはならない存在になっている。
2500万人の観客動員があるプロ野球では、一般客が最大の上顧客ではある。しかし、今のプロ野球は観客動員のために多大なコストをかけている。ファンクラブの運営、グッズの配布、きめ細かなマーケティング、収益性はそれほど高くないのだ。
放映権料は、昔の全国ネットの時代と比較すれば数分の一だ。地方局やBSが支払う放映権料は、キー局よりも安価なのだ。
グッズ販売やライセンスビジネスも球団の大きな収益だが、コストがかかったり、契約が不安定だったりする。

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そんな中で、スポンサーは収益性が高く、ひじょうにありがたい存在だ。スポンサーにはいろいろな形がある。アンダーアーマーのように、ユニフォームやウェアを提供するサプライヤー、球団をシーズン通して支援するオフィシャルスポンサー、球場に看板を出すスタジアムスポンサー、さらには試合ごとに支援をする冠スポンサー。これが大きい。プロ野球の試合に行けばわかるが、今やかなりの試合が「冠試合」になっている。冠スポンサーの費用は1試合当たり1000万円~数千万円と言われている。こちらは大企業よりも地元企業が多い。

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NPB球団のビジネスモデルでは、スポンサーは不可欠の存在になっている。スポンサードした企業は、試合中にビジョンでCMを流したり、商品の告知をしたりすることができる。また、始球式をその企業のトップや幹部が務めることもある。年間指定席を優先的に提供することもある。
各球場には貴賓席があるが、スポンサー企業の幹部は、ここでゆったりと試合観戦をしたりする。試合の前後には監督や主力選手が挨拶に来ることもある。サインをしたり、ユニフォームやグッズなどもプレゼントしたりする。
そういうときに、状況がわからず不愛想な対応をする選手は厳しく叱責される。スポンサーに対しては、どんな大選手も最大限の敬意を払うのだ。この点、ゴルフと変わりはない。

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ちなみに独立リーグでは、スポンサーが最大の収益源になっている。

スポンサーが、昔の大相撲の「谷町」のように大きな顔をしているのは、一般のファンとしてはそれほど面白い話ではない。しかしそういう「大人の世界」があることも知っておくべきだろう。


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