阪神をめぐる話もそうだが、最近の野球ファンは総じて「応援はする」が「文句は言わない」傾向にあるのではないか。
昭和の時代、野球ファンは「文句たれ」だった。弱いチームのファンは、不甲斐ない選手のプレーを嘆き、監督の采配を批判し、ケチな球団に文句を垂れた。強いチームのファンも「面白くない野球をする」とか「あの選手を活かしていない」などと、ことあるごとに文句を言った。

ようするに、そういうのが面白かったのだ。飲み屋のカウンターでそういう愚痴とも独り言ともつかないことをしゃべり始めると、見知らぬおっさんがそれに相槌を打ったりする。時には激論を交わしたり、昔話に花が咲いたりする。

要するに昭和の野球は「酒の肴」だったのだ。

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もちろん、今もそういうファンはたくさんいる。広島でタクシーに乗って「今の広島はだめ、東出が内野を守ってる間は勝てん」と訊きもしないのに運転手がつぶやいたことがあった。

また、名古屋では「(星野)仙一がおらんようになってから、中日新聞がドラゴンズに金を出さんようになった」と聞いたこともある。

そういう批評精神を持ったファンもいるにはいるだろうが、今、球場に足を運ぶファンのかなりの部分が「何があってもチームを応援する」感じになっているのではないか。

何せ、どんな状況でも味方が打席に立てば「かっとばせー」「○○ヒット」「ホームラン、ホームラン○○」である。
昔であれば、「あかん、お前はよう打たんから引っ込め」とか「どうせ打てへんねんからつないでいけ」などとネガティブな声もかかったが、今は応援一色で、異論めいた声は塗りつぶされる。

球場によってはトイレなどに「球場では選手を応援しましょう。心無い野次はやめましょう」と書かれている場合もある。私などは、小便するたびに「大きなお世話だ」と毒づいたりしている。

本来、批評精神は、野球観戦の最高のスパイスのはずだ。素人監督があーだこーだ言うことで、野球の面白さが増していく。
もちろん、差別的なヤジや心無い悪口は慎むべきだが、成績が残せていない選手は、出場しても肩身の狭い思いをしてしかるべきだと思う。

「俺は、いつまでもどこまでも球団のファンだ。選手や監督をひたすら応援する」というファンは、失礼ながら思考停止をしているのではないかと思う。

ファンとてもコンシューマーのはずだ。高い金を払ってわざわざ応援しに来てやっているのに、不甲斐ないプレーをしたら、遠慮なく文句を垂れるべきではないのか。

例年の阪急阪神ホールディングスの株主総会で聞かれる、阪神タイガースへのくだらない質問は、このチームのファンの批評家精神が、すっかり減退したことを物語っていると思う。

MLBでは成績が悪かったり、解体モードでやる気がないチームの観客動員は激減する。今年のマーリンズなど、ほぼ半減している。

そういう厳しいファンの方が、大甘のファンよりもレベルが高いと思うが、いかがか?

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