昨夜はワールドカップを見たくなかった。サッカーファンでもないし、愛国心もそれほどないが、日本がみじめに負けるのをオンタイムで知りたくないと思った。

しかし、いろんなところから途中経過が入ってくるのだ。「俺に教えるなっちゅーねん」と毒づいているうちに日本が勝って、あわてて居間のテレビに駆け寄ったら、ドラマを見ていた娘にものすごい目でにらまれた。

いわゆるジャイアントキリングなのだろう。コロンビアはFIFAランキング16位、日本は61位。このランキングは実力を正確に反映しているとは言えなようだが、今回のワールドカップの出場国で、日本よりランキングが下なのは開催国ロシア(70位)とサウジアラビア(67位)だけだ。
日本は全敗だろうという下馬評だったが、グループリーグ勝ち抜け有力とされたコロンビアに勝ったわけだ。

この勝利と、たとえばWBCで日本がドミニカ共和国やアメリカに勝つことと、どちらが凄いことなのか?競技が違うし、単純な比較はできないが、おそらくワールドカップの方がはるかに凄いことなのだろう。

サッカー界には「国際秩序」がある。世界の強豪国は、圧倒的な戦力を有し、次元の違うサッカーをしている。サッカー小国日本は、まさに「巨人たち」に挑んでいるのだ。
そして世界のサッカーは、頂点のイベントであるワールドカップを目指して、すべての国が戦いに参加する。ワールドカップの価値が高いのは、正真正銘の「世界一決定戦」だからだ。
昨日の試合が、真剣勝負であることに疑問をさしはさむ余地はない。

しかし野球界には、国際秩序はない。あるのはMLBを頂点とする大きな山と、NPBの山と、KBOやCPBLの小山だけだ。それぞれのお山の大将は、一部連携しながらもばらばらに商売をしている。
WBCは、一応「野球のワールドカップ」ではあるが、すべての球団のすべての選手がベストなコンディションで参戦するわけではない。大物でも出場を嫌がる選手もいるし、出し惜しみをする球団もいる。真剣勝負であるのは間違いないにしても、「頂点の戦い」とはいいがたい。

日本のメディアは同じようにバカ騒ぎをするが、競技者や愛好者は肚の中でその違いをわかっている。WBCはワールドカップの何分の一かの値打ちしかない。そしてその価値の差が、野球とサッカーの差でもあるのだ。

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なぜそうなるのか?おそらく、それは二つのスポーツの原初の段階までさかのぼると思う。

世界で初めて「リーグ戦」を考案したのはアメリカの野球だ。最初のリーグであるナショナル・アソシエーションは緩やかなルールで運営されていたが、次に生まれたナショナル・リーグは、排除の論理で弱小チームを追い出してメジャー・リーグを創設した。以後、野球のリーグは他者を受け入れず、他のリーグとは協調せず、ここまでやってきた。MLB、マイナーリーグ、独立リーグ、NPB、さらにはアマチュア野球などは、みな独立独歩であり、一枚岩にはならなかった。
その結果、中途半端なWBCのような世界大会しか持つことができなかった。

サッカーのリーグは野球のナショナル・リーグを真似て、イギリスではじまった。当初は12クラブだったが、参加クラブが増えるとリーグはディビジョン1、2、3に分かれ、さらに北部、南部に分かれた。同様のリーグが世界中に広がった。サッカーにももちろん組織同士の争いはあったが、排除の論理ではなく、共有の論理でマーケットとファンを獲得してきた。

「排除」と「共有」の差が、ワールドカップとWBCの差につながった。

そして今の日本の、野球とサッカーも「排除」と「共有」という両組織の体質の差で、数歳が違ってきているように思う。

ワールドカップのたびに「それに引きかえ野球は」と思うのは、私が野球好きだからだ。悩ましいことではある。

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