第1回大会から比較すれば少しは注目度も上がり、アメリカもやる気を出しているようだが、WBCはどこまで行ってもワールドカップにはならない。そして野球の未来に多大な貢献をすることはないだろう。

確かにMLBはいい選手を出すようになった。まだ飛車角落ちの感はあるが、それでも侍ジャパンは手が出ない。ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコのカリビアン御三家もいい選手が出るようになり、日本はなかなか勝てなくなっている。

MLBが少しやる気になっているのは、収益が出ているからだろう。また各球団のオーナーも選手の意向をある程度尊重するようになった。だんだん認知度が高まった。アメリカが前回に優勝したことで、アメリカでのWBCの注目度は上がるだろう。

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しかしWBCの理念は大きく後退しているように思う。バド・セリグがこの構想を打ち出したときには、WBCを「野球のワールドカップ」にすることで、野球の競技人口、市場、ビジネスチャンスを世界に広げていこうという高い目標を掲げていた。

しかし今のコミッショナー、ロブ・マンフレットはビジネス面ではWBCを推進しているが、野球の普及、市場の拡大への熱意は失っているように思う。中国でのプロリーグの挫折以降、世界への野球普及活動は変質しつつあるように思う。今もヨーロッパやアフリカ、オーストラリアなどにはプロリーグ、セミプロリーグがあるが、MLBはそれを支援し、リーグを育成するというよりは、自らの人材供給システムに取り込もうとしているように思える。
結局、MLBは、WBCを通じて、世界に有力なプロリーグを立ち上げるのではなく、傘下のマイナーリーグを植え付けようとしている。
かつてドミニカ共和国やべネスエラ、メキシコなどには、有力なプロリーグがあったが、MLBはこれを競争によってつぶしたり、メキシコのようにAAAとして傘下に収めたりしている。
MLBは、WBCを通じて、世界に「野球植民地」を作ろうとしているだけなのだ。WBCは単にその道具に過ぎないのだ。
ワールドカップとの最大の違いは、ここにある。

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NPBのWBCへの政策も変質した。2017年11月、中島大輔さんは、NewsPicksの「野球崩壊」でこう書いた。

2017年3月のワールド・ベースボール・クラシック限りで、侍ジャパンは大きく使命を変えた。「野球界を一つにする」という目的において言えば、侍ジャパンは“崩壊”してしまった。
「非常事態を通り越している状況」について、前述の元関係者が続ける。
「今の侍ジャパンは、野球界が抱えるいろんな課題を解決していくことを目的にした組織ではありません。トップチームの興行を作って、売って、そこで収益を上げていくという、興行だけを見る団体になってしまいました」
侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズは5月1日、読売新聞スポーツ事業部の山田隆氏の新社長就任を発表した。同じ頃に、侍ジャパンを担当する広告代理店は博報堂から電通に変わった。
現在の侍ジャパンが見据えているのは、東京五輪での成功だ。同大会にメジャーリーガーの参戦は100%に限りなく近い確率であり得ないが、各紙は異口同音に「2020年の金メダル獲得へ」と書き立てるばかりである。


要するに侍ジャパンは国際戦略や、国内での野球の普及などの本来の目的を放擲し、2020年東京五輪、翌年のWBCへ向けてあぶく銭を稼ぐ組織に変質しているのだ。
侍ジャパン創設に尽力したスポーツマネジメントのプロは退社し、各球団から派遣されてその下で働いていた志の高いスタッフも、球団に戻ってしまった。

今のWBCはメディアに乗って一儲けしようという団体になっているのだ。
WBCは、ワールドカップのような志も、ビジョンもない。金儲けの手段になろうとしている。

ワールドカップのシーズンになるとため息が出るのは、こういう現実があるからなのだ。

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